2017年1月8日日曜日

釜山少女像に関する「ウィーン条約」への誤解

在釜山日本総領事館前における新たな慰安婦少女像設置に関連し、にわかに脚光を浴びているのが「ウィーン条約」です。

しかし、「ウィーン条約」と称される条約は複数あります。「外交関係に関するウィーン条約」「領事関係に関連するウィーン条約」「条約に関するウィーン条約」などが挙げられます。

この各種「ウィーン条約」のうち、日本政府が抵触の可能性を懸念しているのは「領事関係に関するウィーン条約」です。これは、2017年1月6日午前の菅官房長官の記者会見より確認できます。首相官邸のサイトより、実際に確認してみましょう。

http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201701/6_a.html
(以下引用)
 領事関係に関するウィーン条約に規定する領事機関の威厳等を侵害するものと考えており、同条規定に照らして、極めて遺憾であります
(引用終了)

Twitter上では、「外交関係に関するウィーン条約」と混同する向きも散見されますが、日本政府が抵触を懸念しそれを表明しているのは「領事関係に関するウィーン条約」の方である事は抑えておくべきであろうと思います。

では、少女像設置が「領事関係に関するウィーン条約」のどの部分に抵触する懸念があるのか検討してみましょう。ここでは、武力紛争法(国際法の一種)研究の第一人者である同志社大新井京教授のウェブサイト( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/ )内のオンライン条約集より、「領事関係に関するウィーン条約」の項目( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/vccr.htm )を参照してみましょう。

(引用開始)
第三一条(領事機関の公館の不可侵)
(中略)
 3接受国は、2の規定に従うことを条件として、領事機関の公館を侵入又は損壊から保護するため及び領事機関の安寧の妨害又は領事機関の威厳の侵害を防止するためすべての適当な措置をとる特別の責務を有する。
(引用終了)

とあります。菅官房長官の会見と照らし合わせるに、日本政府は、具体的には「領事関係に関するウィーン条約」第31条3項に韓国側が抵触していると考えている、と見る事ができます。

ネット上で各種条約を調べる際は、先に言及した同志社大学新井京教授の手によるオンライン条約集( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs.htm ) もしくは東京大学東洋文化研究所の手による『データベース「世界と日本」』(  http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/)を参照、引用するのが信憑性と閲覧のしやすさの観点から得策かと存じます。

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