2017年2月28日火曜日

島根はいいぞ 1日目

羽を伸ばしに、そして旧友に会いに島根に来ております。

 羽田から冬の日本アルプスを越える形で出雲空港へと向かいます。途中で、岐阜基地から発進したと思しき戦闘機(形状は確認できませんでしたが、旅客機と比較しはるかに高速でした)らしきものを見かけました。
冬の日本海も綺麗なものです。
宍道湖上空を低空で飛行し、出雲空港へアプローチするJL283便。機材はB737ながら、あたかも一式陸攻に乗り合わせたかのような感覚です。

初日は旧友と再会し、共に温泉に浸かったのち食事へ。
生姜の天ぷらというのも面白いものです。辛味が抑えられ、むしろ甘みが出ています。

 見た目は強烈ですが、なかなか上品な味わいです。

白魚の天ぷらです。今が旬との事で、脂が乗っています。塩でも出汁でも良し。


お造りは地酒と共に。一番手前の魚はこの地の名物「ノドグロ」で、島根出身の錦織圭氏も愛好しているのだとか。柔らかな身と甘みのある味わいが実に良いものでした。

日本海側の地域には馴染みが無かったのですが、食文化一つ取っても実に豊かなものでした。
明日はどんな山陰文化に触れられるでしょうか?

米地上部隊は派遣されるのか? 米国防総省 対ISIS戦略草案提出

米国防総省がシリア領内に対し、対ISIS作戦を目的とした大規模な地上部隊を派遣する構想を提案するのではないか?という説が存在するのは過去の記事(http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/02/cnn.html)で述べた他、仮に派兵するにしても課題は山積している事も述べました(http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/02/blog-post_17.html)。

そして、ついに国防総省からISIS掃討作戦の加速に向けた計画の草案が提出された模様です。以下、共同通信の記事をご覧ください。

対イスラム国戦略は「予備段階」 米国防長官、計画の草案提出 
(引用開始)
トランプ大統領が今後、対IS戦略を変更するか検討する。デービス氏は草案の中身は機密情報だとし、シリア北部への地上戦闘部隊派遣の提案が盛り込まれたかどうかの明言は避けた。米軍が取る可能性がある行動について「事前に敵に知らせたくない」と述べた。
(引用終了)

どうも煮え切らない印象です。派兵の有無はもう少し様子を見ようかと思います。

モスル西部奪還作戦9日目(要衝の橋の制圧)

モスル西部奪還作戦9日目で、政府軍側はチグリス川にかかる要衝の橋の制圧に成功しました。
これにより、従来お伝えしてきたモスル国際空港が位置する南部の方面のみならず、東部方面からもモスル西部に進軍が可能となります。

これを伝えるBBC記者のツイートがこちら。

 そして、これを伝えるBBCの記事がこちら、

 Mosul battle: Iraqi forces seize key bridge
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39103701 

アルジャジーラの記事がこちらです。

Forces push into western part of ISIL-held Mosul
http://www.aljazeera.com/news/2017/02/forces-push-western-part-isil-held-mosul-170227135345180.html 

双方の記事を参照するに、イラク政府側が掌握に成功したのは4thBridge,「モスル第4号橋」とでも訳せば良いのでしょうか。そして、双方の記事でISIS側が狙撃、対戦車ミサイル攻撃、自爆車輌攻撃(BBCの記事では、迫撃砲とドローンによる攻撃にも言及)で抵抗している事がわかります。

政府軍の進軍に伴い、抵抗は一層激しくなることが予想される他、ISIS側の「人間の盾」により市民の被害の拡大が懸念されます。

2017年2月27日月曜日

モスル西部奪還作戦8日目

モスル西部奪還戦8日目までを報告したBBCの記事が出ました。

Battle for west Mosul: Bombs 'fall like rain' on front line
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39099388
この「爆弾の雨」を降らせているのは政府軍側ではありません。ISIS側がドローンを用いて空爆を行っているのです。市民の負傷者・心理的被害も生じています。
政府軍の進軍を阻むのはドローンだけではありません。ブービートラップ型の自動車爆弾により、政府軍側に死傷者が生じています。
モスル西部市街地が近づくにつれ、ISIS側の抵抗も激しくなり、政府軍側の進軍はゆっくりとしたものにならざるを得ない印象です。

匿名Twitterユーザーによれば、8日目の状況はこうなっているのだとか。


 さて、モスル西部奪還作戦開始から従軍取材を行い、充実した報道を行ってきたBBCクエンティン・サマービル記者は前線を離脱しました。それゆえ、今後Twitter上での情報収集をどうすべきかと考えております。

先ほどのBBCの記事を執筆したWyre Davies記者(https://twitter.com/WyreDavies),バズフィードのMike Giglio記者(https://twitter.com/mike_giglio),ロサンゼルス・タイムズのNabih記者(https://twitter.com/nabihbulos),フリーカメラマンのWarzer Jaff氏(https://twitter.com/warzerjaff)等、現地にいらっしゃるジャーナリストの方々のツイートを参考にしようかと思っています。
Warzer Jaff氏は自身のツイートで、イラク特殊部隊員のISISによるドローン攻撃に関する証言を紹介しています。


ISISは攻撃のみならず、自爆攻撃車両の戦果確認にもドローンを用いているとの旨です。

市街地が近づき、家を一軒ずつ、区画を1ブロックごと制圧するような戦闘に到つつある今、日ごとに戦況をお伝えするのは難しいのかもしれません。

モスル西部奪還作戦7日目(クルド人女性レポーターの死・BBC従軍記者クエンティン・サマービル氏の報告)

モスル西部奪還作戦開始から7日目にはショッキングな報告が入りました。
クルド人の女性TVレポーターが戦地にて殉職なさったのです。殉職されたShifa Gardiさんは30歳、あまりに若すぎる死です。

これを報じるBBCの記事はこちら。

Mosul battle: Kurdish reporter Shifa Gardi killed in Iraq
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39089148 

さて、従軍取材を行ってきたBBCクエンティン・サマービル記者ですが、最前線の取材から離れる模様です。


恋人の名が世界発信されています…。この戦いから生き残り、恋人の元へ戻って欲しい。


ISIS側からM4カービンが押収されました。


暇な時、ISIS戦闘員はこんないたずら書きをしていたのですね…



帰還用のヘリの到着です。サマービル記者、最前線での取材本当にお疲れ様でした!

興味深いビデオも2件公開されました。
 Mosul: Roadside bombs and gunfights
http://www.bbc.com/news/uk-39079673 
6日目までの映像です。

Islamic State uses drones for Mosul attacks
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39092883 
ISIS側がドローンを用いて空爆を行う映像です。

2017年2月25日土曜日

共謀罪/テロ等準備罪と国連安保理決議2178

共謀罪/テロ等準備罪に関して国内での議論が活発な状況ですが、個人的に気になっているのは外国人テロ戦闘員問題に関して定めた国連安保理決議2178との関係性です。

国連安保理決議2178の全文和訳は、国連広報センターのサイトより閲覧可能です。
http://www.unic.or.jp/files/s_res_2178.pdf

そして、外務省のサイトによれば、国連安保理決議2178では以下の事が加盟国に要求されています。安保理決議は法的拘束力のあるものです。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/is_sc/page23_001173.html
(引用開始)
 全ての加盟国が,テロ行為に対する資金の供与,計画,準備,実行,支援に参加する全ての者を法で裁くことを確保すべきとした安保理決議第1373号における決定を想起するとともに,全ての加盟国が,テロ行為の実行・計画・準備,テロ行為への参加,テロの訓練の提供,テロの訓練を受けることを目的とした,(1)渡航又は渡航の企図,(2)かかる渡航に対する資金提供,(3)渡航の組織化,便宜供与等を国内法で犯罪化し,これらの行為を行う者の訴追・処罰を確保することを決定【主文6】。
(引用終了)

ここで想起されるのが、2014年10月に発覚した北大生がISIS戦闘員として渡航を計画していた件です。今も日経のサイトに詳細が残っています。

「イスラム国」参加企てか 北大生「戦闘員として」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG06H21_W4A001C1CC1000/ 

記事中にもあるよう、警察は刑法の私戦予備・陰謀の容疑で捜査を行ったわけですが、結局、北大生に法の裁きは下されずに終わっています。

朝日新聞の記事で共謀罪法案の概要が明らかになりましたが( http://www.asahi.com/articles/ASK2S53LJK2SUTIL034.html )、これが国連安保理決議2178の上記の規定を遵守し、この種の事件の再発を防止する為に役立つのであれば、必要なのではないか…?と考える次第です。

あまり言及されていない視点のように思えたので執筆しました。ご意見をお待ちしております。
 

モスル西部奪還作戦6日目(BBC従軍記者クエンティン・サマービル氏の報告)

5日目にモスル国際空港奪還に成功したイラク政府軍は、そのままモスル西部中央へと前進を続けています。

BBCの記事はこちら。
Iraqi forces enter IS-held neighbourhood in west Mosul
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39074992
記事をご覧になれば、モスル旧市街まで数キロに迫っていることがわかります。
しかし、ここからが戦闘の正念場のようです。以下、BBC従軍記者クエンティン・サマービル氏のツイートをピックアップしていきます。

「これが真の戦闘の開始となるだろう」との指揮官の言葉はまさに今後の苦難を象徴するものとなるでしょう。


IEDがあちこちに設置され、ISISのドローンが飛来し、ISIS狙撃手の銃弾が頭上を飛び交います。モスル旧市街は非常に近いのです。


ISIS側の抵抗により、前進はかなりゆっくりとしたペースに。


石油やタイヤ等を燃やして煙幕を炊いているのか、視界は不鮮明です。


大口径の手製迫撃砲、俗に言う「ヘルキャノン」の発射映像です。


前進に伴い、ISIS側の抵抗も激しくなります。


大佐曰く「真の戦闘の開始だ」。



装甲ドーザーで陣地を切り崩し、更に前進します。



敵味方双方がドローンを活用する時代です。


大佐によれば、兵士の士気は旺盛の模様です。


IDカードを晒されるISIS戦闘員。



ギリースーツを着込んだ狙撃手の登場です。

記事執筆時点で、モスル西部奪還戦は7日目に入ります。どれだけ旧市街に近づけるのでしょうか?

2017年2月24日金曜日

モスル国際空港奪還! モスル西部奪還作戦5日目(BBC従軍記者クエンティン・サマービル氏の報告・その他諸々)

モスル西部奪還作戦で大きな戦果が得られました。作戦開始5日目にして、モスル国際空港奪還に成功したのです。

まずはBBCの記事をご覧ください。
Mosul offensive: Iraqi forces recapture airport in bid to retake city
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39061811 
冒頭にあるBBC従軍記者クエンティン・サマービル氏の報告は、銃弾飛び交うまさに最前線で行われています。この映像は、モスル国際空港と3日目に制圧したAb Saif村の間にある砂糖工場近辺で撮影されたもの。砂糖工場にはIS戦闘員が立てこもって抵抗していたのでしょう。レポート内にある通り、 周囲にはISISの設置したIED(路肩爆弾)が多数存在します。
記事中にあるよう、イラク政府側はモスル国際空港に近接するal-Ghazlani基地に対しても攻撃を行っています。この基地に対しては、イラク軍が4台しか保有していないTOS-1(サーモバリック弾を投射するロシア製自走地対地ロケット)が攻撃に使用されています。

以下にあるよう、AFPがモスル国際空港への攻撃開始を速報したのが現地時間10:02
サマービル記者が以下のツイートでモスル国際空港奪還を報じたのが現地時間13:44


ですので、BBC記事やサマービル氏のツイートにあるよう、モスル国際空港奪還にかかった時間は4時間程度と見て良いようです。

では、サマービル氏のツイートによる報告により、5日目の流れを追ってみましょう。



IEDを避けつつ蛇行運転をしながら、モスル国際空港への進軍開始です。



クロアチア製VHS-2ライフルはここでも目立ちますね。そして、コカコーラを模した悪ふざけのパッチ。



地元住民によれば、ISISは多数のIEDを設置し、かつ70~100名以上がモスル西部中心部に向け退却したとの事です。


IEDを避けるべく壁を伝って進軍します。


空港外縁まで到達しました。


戦闘開始です。有志連合の空爆で生じたクレーターを遮蔽物に、ルーマニア製FPK狙撃銃で応戦しています。




破壊の限りを尽くされた道をブルドーザーで整地したのち、エイブラムズ戦車が配置に付きました。なんと頼もしいことか!



ISISの設置したIEDは脅威です。中尉が戦死しました。

IEDと迫撃砲の脅威に屈することなく、イラク政府側部隊は前進を続けます。



そしてモスル国際空港奪還に至りました。サマービル記者は、現地で「ペリスコープ」を用い、実況レポートを行いました。是非とも録画をご覧ください。

いよいよ、モスル西部中心・市街地が目前に迫りました。

2017年2月23日木曜日

シリア反体制派 ISISからAl Babを奪還

本日は嬉しいニュースが2つ入ってきました。1つはモスル西部奪還作戦における、モスル国際空港がISISより奪還された事ですが、これは明日改めて「モスル西部奪還作戦5日目」のタイトルでまとめて記事にしようと考えております。

もう1つが、シリアでISISが占拠を続けていた都市Al Babを反体制派が奪還した事です。

それを伝えるAFPの速報がこちら。
各種メディアから詳報が出るのを待ち、追記します。

(追記)
NHKより、日本語での詳細な報道が入ってきました。

シリア北部のIS拠点バーブをほぼ制圧
ポイントの1つが、「ほぼ」制圧である事です。以下にアルアラビーヤのツイートを引用しますが、ISISと思しき残党による自爆攻撃が追記記事執筆時点でも行われています。こうした残党の掃討に、しばらく時間がかかるものと思われます。

次に、NHKの記事には気になる部分が見られます。
(引用開始)
一方、バーブの攻略に向けては、アサド政権の政府軍も南から部隊を進めてきたため、トルコ軍や反政府勢力との間の偶発的な衝突も懸念されています。このため、ロシア政府がトルコとアサド政権の間の調整を進めていて、アメリカのトランプ政権による対IS作戦やシリアの内戦への政策がまだ定まっていない中、シリア情勢をめぐるロシアの影響力がさらに強まっています。
(引用終了)
シリア領内での正規軍同士の衝突の危険性、ロシアの中東でのプレゼンス強化、双方共に懸念すべき事案かと思います。

また、Al Bab奪還は先日の記事( http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/02/cnn.html )にて紹介しました米対シリア地上部隊派遣構想とも関係してくるのではないか?との印象も抱いています。相互フォローの関係にある方より転載許可を頂きましたゆえ、以下ツイートを転載致します。


 Al Babが反体制派の手によりほぼ奪還された現在、仮に米対シリア地上部隊派遣が行われるのであれば、後者のAl Babを経由したルートを選択し、トルコ軍と米軍が共同でISISが首都と位置付けるラッカに進軍する可能性が高いのではないか?と愚考します。


モスル西部奪還作戦4日目(BBC従軍記者クエンティン・サマービル氏の報告)

モスル西部奪還作戦の4日目の様子を、BBC従軍記者クエンティン・サマービル氏の報告より見てみましょう。

まずはBBCのサイトにて、こちらの映像が公開されました。

Mosul offensive now focused on city's airport
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39057336 
奪還作戦の2~3日目にかけ、イラク政府軍部隊が奪還したAbu Saifが高台に位置する要衝である事がよくわかる映像です。モスル国際空港も間近ですね。

サマービル氏のツイートも、非常に興味深いものでした。
偵察・観測に使うのであろうドローンを運んでいます。



次に、イラク政府側狙撃手に密着取材した成果をご覧ください。

窓拭き洗剤容器を狙撃位置の目印に使っているようですね。使用している銃器はブルパップ式対物ライフルのようです。


狙撃手・観測手共にギリースーツを着込み完璧な体制です。ルーマニア製FPKと思しき狙撃銃も出てきました。これでISISの旗がはためく建物の様子を監視します。


この後、しばらくサマービル記者がツイートを行わなかったので(狙撃されたのでは?)と肝を冷やしてしまいました。


拘束され、移送されるISIS戦闘員の国籍はどうやらロシアとのこと。チェチェン系でしょうか、あるいはダゲスタン系?

5日目は、いよいよモスル国際空港への攻撃開始です。

2017年2月22日水曜日

週刊安全保障民朗報! 自民BMD検討チームに中谷元氏

「週刊安全保障」視聴者にとり朗報が入りました。自民党が設置した「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」が明日23日に初会合を開き、THAADを含めた装備面に関して検討を行うというのです。メンバーには、「元ちゃん」こと中谷元前防衛大臣も加わっています。以下、産経新聞の記事をご覧ください。

弾道ミサイル防衛検討の自民党特別チームが23日に初会合 THAAD導入議論、今春めどに結論
http://www.sankei.com/politics/news/170222/plt1702220010-n1.html 
(引用開始)
 特別チームの名称は「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」。党安全保障調査会(今津寛会長)の下に置かれ、元防衛相の小野寺五典政調会長代理が座長を務める。今津氏や中谷元(げん)前防衛相、寺田稔国防部会長など党国防族の主要メンバーで構成する。平成30年度予算の概算要求への反映を視野に入れ、今春をめどに一定の結論を出す。
 自民党ではBMDをめぐり、THAADのほか、広い範囲で常時迎撃態勢をとれる地上配備型イージスシステム「イージス・アショア」や、ミサイルの発射を探知する早期警戒衛星の導入なども議論されている。
(引用終了)

ミサイル防衛に関心のある皆様にとり、非常に興味深い内容となっています。THAADはもちろん魅力的な選択肢ですが、先日のSM-3ブロックⅡAの迎撃実験成功を見るに、イージス・アショアの魅力も上昇したのだろうか?と感じます。
従来、米国に頼らざるを得なかった早期警戒衛星からの情報も、日本が独自に探知することのできる意味も大きいかと存じます。

23日の会合を踏まえた上で、中谷元前大臣にはまた「週刊安全保障」にいらして頂きたいものですね。

モスル西部奪還作戦3日目(BBC従軍記者クエンティン・サマービル氏の報告)

この記事を執筆しているのは2017年2月22日日本時間15時。イラクも朝9時を迎え、モスル西部奪還作戦4日目となりました。

昨日の記事( http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/02/2bbc.html )の追記で述べた通り、モスル西部奪還作戦3日目にあたる2017年2月21日、イラク政府軍はモスル空港を見渡す位置にある要衝の村、Abu SaifをISISから奪還しました。

Mosul offensive: Iraqi army seizes key town of Abu Saif
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39038509 

サマービル記者が従軍取材する部隊の3日目の成果はこの村の奪還のみであり、それ以外の情報は入っておりません。部隊はこの要衝の村で、小休止といったところでしょうか。

いずれ、サマービル記者のこちらのツイートにあるよう、平和が取り戻されたAbu Saifから次のエリアへと向かわねばなりません。

2017年2月21日火曜日

追悼:チュルキン露国連大使

チュルキン露国連大使が2017年2月20日、急死しました。享年64歳というあまりに早すぎる死です。

駐日ロシア大使館は次のようなツイートをし、彼の死を悼みました。

露国営プロパガンダメディア、スプートニクも彼の死を悼む報道を行なっています。
  
ロシアのチュルキン国連大使が20日、ニューヨークで急死
https://jp.sputniknews.com/russia/201702213361940/ 

日本のメディアですと、例えばこの毎日新聞の報道が印象的です。

チュルキン氏が急死…「外交の巨匠」悼む声
http://mainichi.jp/articles/20170221/k00/00e/030/176000c 
(引用開始)
 米国のヘイリー国連大使は20日、声明を発表し、「我々と意見は必ずしも同じではなかったが、疑いなく素晴らしい技量でロシアの立場を主張した」と死を悼んだ。シリア問題などを巡ってチュルキン氏と激しく衝突したパワー前米国連大使も「外交のマエストロ(巨匠)で、思いやりのある人だった」とツイートした。
(引用終了)

ロシアと激しい対立をしていたオバマ政権の下で、国連大使を務めていたパワー氏ですら、彼の実力を認め、追悼しているのです。

チュルキン氏が国連大使の任に就いたのは2006年。それ以降、度重なる北朝鮮のミサイル発射及び核実験、グルジア戦争、米軍の中東からの撤退、アラブの春、ウクライナ危機、シリア内戦へのロシアの介入がありました。ウクライナにおける力による現状変更やシリアにおける人道危機によりロシアが国際的に孤立する中で、国益を守り抜こうとしたチュルキン氏の心労は察するにあまりあります。

チュルキン氏には、「ゆっくりお休みください」とのお言葉をお掛けしたいです。

モスル西部奪還作戦2日目(BBC従軍記者クエンティン・サマービル氏の報告)

2017年2月19日にイラク政府軍によるISISからのモスル西部奪還作戦が開始された事、そして従軍記者クエンティン・サマービル氏がBBCの充実した報道に大きな貢献を果たしていらっしゃる事は、昨日の記事( http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/02/bbc.html )で述べた通りです。

そして、モスル西部奪還作戦2日目の様子が入ってきました。

Mosul offensive: Iraqi army battles for outskirts of IS city
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39024723 
イラク政府軍はモスル西部の南部近郊に進行し、モスル空港を見渡せる位置にある戦略上重要な村、 Abu Saifにヘリからの機銃掃射を行ったのち(ビデオのサムネイルを見るにMi-28であろう)、地上部隊を村に展開させ攻略に着手した旨です。
M1エイブラムズも投入されています。

ISIS側の抵抗も激しいようで、イラク特殊部隊のものと思しき黒塗りのハンビーがRPGの攻撃により破壊されています。

BBCは空撮も含めたビデオも公開しています。これも、サマービル記者のレポートです。
http://www.bbc.com/news/video_and_audio/headlines/39031260
イラク軍がMi-28を投入し機銃掃射を行い、バイクで逃走を試みたISIS戦闘員2名を殺害した旨、IEDを用いてAbu Saifにおいて抵抗を行なっている事がわかります。


(追記)
要衝の村、Abu Saifは2017年2月21日の段階でイラク政府軍の手により奪還されました。

Mosul offensive: Iraqi army seizes key town of Abu Saif
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39038509 

奪還した村の様子を、サマービル氏のツイートを通じて見てみましょう。

この携帯充電器などはブービートラップの可能性も考慮すべきでしょう。




ISIS戦闘員から鹵獲したM16小銃は、もともと米軍のものでした…というオチ。



イラク軍にとり、モスル空港は目前…といった状況になりました。
追記内容は、正確には3日目の状況…といった感じですね。
それと、村の名前をBBCのサイトがAbu Saifと表記しているのに対し、サマービル記者はAlbu Saifと表記しているのもちょっと興味深いです。アラビア語の英語表記もバラつくものですね。
(追記)
2日目の様子の和訳ビデオが公開されました。
http://www.bbc.com/japanese/video-39048517

2017年2月20日月曜日

BBC,そして従軍記者クエンティン・サマービル氏による充実したモスル西部奪還戦報道

2017年2月19日、イラクのアバディ首相はISISが占拠を続けるモスル西部奪還作戦の開始を発表しました。

BREAKING: #Iraq's Abadi says #WestMosul battle against ISIS has begun https://t.co/uShGx3nBAg
既にイラク軍はチグリス川東岸にあたるモスル東部は掌握していますが、川を挟んだ西部は攻めあぐねている状況でした。それが遂に奪還作戦開始に至ったことは、非常に大きな意味を持つものと考えられます。思い出してもみてください、2014年6月にISISが建国を宣言したのは、モスル占拠の直後の事だったのですから。

モスル西部奪還作戦は各種メディアが報じていますが、私が一番充実していると考えているのはBBCの報道です。2017年2月20日現在、モスル西部奪還作戦にて従軍取材を行っているメディアは、どうやらBBCただ1つのようだからです。今朝方、BS1のワールドニュースにて確認したところ、中東取材に定評のあるアルジャジーラですら、政府側提供と思しき映像を使用し報道をしていました。

まずは、BBC日本語版の記事をご覧ください。

イラク軍、第2の都市モスル奪還向け攻勢
http://www.bbc.com/japanese/39024406 

元となった英語版の記事は、前線の映像が含まれ、更に充実しています。
Mosul assault: Iraq troops make headway against IS
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-39018984 

このBBC報道の充実さに最も貢献しているのは、イラク軍に従軍取材を行っているBBC記者、クエンティン・サマービル氏であると考えます。彼は自身のTwitterからも写真・映像のついた形で情報発信を行っており、関心のお持ちの方はフォロー必須と言っても過言ではありません。
https://twitter.com/sommervillebbc

アカウントをご覧になれば、救急車に偽装されたISISの自動車爆弾(背信行為であり慣習国際法違反)、近代的なフォルムが特徴的なクロアチア製ブルパップアサルトライフルVHS-2,現地にて多様な改造が施されたハンビーの類が確認でき、まさに対ISIS戦らしさが現れた戦闘が繰り広げられている事がご確認いただけるかと存じます。

他メディアの参入も期待しつつ、現在はBBCの報道をメインにモスル西部奪還作戦の模様を知るのが推奨されるかと存じます。

(追記)
BBC日本語版サイトが、和訳付きでモスル西部奪還作戦の映像を公開しました。軍事用語の考証もしっかりとなされており、何より戦場の緊迫した空気が伝わってくる素晴らしい内容です。


イラク軍がモスルに向け進攻 記者が同行取材
http://www.bbc.com/japanese/video-39025682 

英タブロイド紙デイリー・ミラー フジ「Mr.サンデー」の放送映像を無断転載

英タブロイド紙デイリー・ミラーのウェブサイトにて、フジテレビ「Mr.サンデー」が放送した金正男暗殺映像が無断で転載されています。無断に転載されているとわかるのは、映像がブレており、TV画面を更にスマートフォン等のカメラで撮影したものと推測されるからです。URLはこちら。

http://www.mirror.co.uk/news/uk-news/sickening-footage-shows-moment-kim-9851276

サイト内には"CCTV footage"などと書いてありますが、掲載されている映像やスクリーンショットは日本語しか使用されておらず、CCTV,すなわち中国中央テレビの映像ではありません。そして、TV画面の右側には「Mr.サンデー」の文字が。どう見てもフジ「Mr.サンデー」内で放送された映像であり、フジテレビの権利が侵害されていますね。

フジテレビは何らかの法的対応は取るのでしょうかね?

2017年2月19日日曜日

妨害電波減少? 日本が行う対北朝鮮短波放送のご紹介

敵対する国に対して行われるラジオ放送は冷戦時代の遺物と捉えていらっしゃる方も多いかと思います。しかし、その認識は誤りと言わねばなりません。現在も、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)やラジオ・フリー・アジア(RFA)といった放送局が存在し、放送を行なっております。そして日本も、北朝鮮向けにそうした放送を行なっているのです。まずは、以下の産経新聞の記事をご覧ください。

対北ラジオ放送「しおかぜ」 北の妨害電波激減 電力不足か 金正男氏暗殺を週明け以降放送
http://www.sankei.com/world/news/170219/wor1702190020-n1.html
(引用開始)
 拉致問題を調べている「特定失踪者問題調査会」(荒木和博代表)の北朝鮮向けラジオ放送「しおかぜ」に対する北朝鮮の妨害電波の頻度が落ちていることが18日、分かった。原因は特定できていないが、電力の6割を賄う水力発電の供給力低下があるとの見方が出ている。北朝鮮では、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、正男(ジョンナム)氏の暗殺は公式報道されていないが、しおかぜは週明け以降、ニュースとして伝えるという。
(中略)
 しおかぜを放送する茨城県内の送信所は概算で毎時最大500キロワットの電力を消費する。対する北朝鮮は放送機材やインフラなどの劣化から電力ロスが相当に出るとの見方を加味。同程度の電力が必要だが、その確保が難しいのではないかと、同会はみている。
(引用終了)
日本が行なっている対北放送の1つに、この「しおかぜ」が挙げられます。記事中にあるよう、民間団体特定失踪者問題調査会が行なっているものです。公式サイトはこちら。
http://chosa-kai.jp/shiokaze.html
記事中にある、出力500kwはかなり大きな出力と言えます。例えば、東京の大手民放ラジオ局であるTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送共に出力は100kwです。AM放送と短波放送の違いこそあれ、それ以上の出力を、民間団体がまかなっている事は特筆に値するかと存じます。ご関心をお持ちの方は、是非ともカンパを推奨します。

日本が行うもう1つの対北放送は、日本政府が実施している「ふるさとの風(日本の風)」です。公式サイトはこちら。
http://www.rachi.go.jp/jp/shisei/radio/

試しにこうした放送を聴いてみたい、と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?それには通常のAM/FMラジオではなく、短波放送も受信可能なラジオが必要です。

私が使用しているのは SONY ICF-SW11 FMラジオです。しかし、「しおかぜ」「ふるさとの風」の受信であればそれほどの感度は要求されないと思いますので、オーム電機 OHM 株・競馬たんぱラジオ S520 RAD-S520Nあたりの比較的安価なもので十分かと思います。

深夜にラジオのダイヤルを回していると、中国語、韓国語、時折英語…と様々な言語での放送が受信でき、なかなか楽しいものです。北朝鮮のプロパガンダ放送である「朝鮮の声」放送など、一度聴くとその種の趣味を持っている方は病みつきになるかと思います。

今回のニュースは、ラジオ好きとして、そして何より拉致被害者の方々のご帰国を願う者として喜ばしいものです。 「しおかぜ」「ふるさとの風」が、今なお北朝鮮に取り残されている多くの拉致被害者の耳元に届く事を願うばかりです。

ターゲット分析は苦手? 文春砲不発

今回の文春砲、不発に終わりましたね。

 声優ファン的には、花澤さんも小野さんも芸歴が長い方ですし、おめでたい話もあって良い頃。お二方とも声優として素晴らしい才能で、まさにお似合いのカップルと言えるかと思います。

一方、今回の文春砲を一般の方がご覧になっても「誰?」という反応しか返ってこないかと思います。

声優ファン向けに、文春側は「ウケる」と判断して記事にしたのでしょうが、声優ファンの分析を読み誤り、不発となってしまったものと思われます。

文春砲が不発に終わる事はしばしばあります。昨年の荻上チキさん不倫報道などもそうだったかと思います。

若手評論家である荻上チキさんを知っている層、すなわち時事ネタに関心のある層はかの不倫報道を読んでも当惑するだけだったと思います。現に私がそうでした。荻上チキさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組Session-22は非常に高い質の報道を提供していますし、彼が運営に携わるサイト「シノドス」は、各界の研究者から質の高い論文を集め、掲載しています。

荻上チキさんを知っている層は、そうしたチキさんが関係するメディアに「文春砲」が影響を及ぼす事を恐れた方が多く、面白がって読んだ人は少なかったのではないかと考えられます。一方、一般の方が記事を目にしても「荻上チキって誰?」といった反応を示したかと。

今回の花澤さん・小野さんの件にしても、荻上チキさんの件にしても、文春砲を撃ち込むターゲットの分析を読み誤って不発に終わっていると考えられます。文春は取材力が高くとも、記事を向ける対象の分析は苦手なようです。

ターゲット分析が苦手なようであれば、文春はターゲットを絞る事なく、全ての層にウケるような「文春砲」を発射すべきかと思います。文春の高い取材能力をもってすれば、それは十分に可能でしょう。

「大作先生は生きているのか?」など、まさに文春砲に適したテーマかと思います。

2017年2月18日土曜日

なぜ喫煙者は居酒屋でタバコを吸うのか? 喫煙者の弁明

タバコの臭いがお嫌いな方は、居酒屋でタバコの煙を鬱陶しいと思った経験、お持ちではないでしょうか?

ごめんなさい、私です。店内喫煙可の居酒屋さんで、一緒に飲んでいる皆さんには一言「すみません、タバコ吸ってもいいですか?」と断ってはいるのですが、店内にいるお客さん全員に断っているわけではありませんので、問題のある行為と言えるでしょう。

なぜ喫煙者は居酒屋でタバコを吸うのでしょうか?その答えは、タバコの持つ覚醒作用にあります。酔いが回ってホンワカとした状態、なおかつアルコールの影響で血行が良くなっている状態でタバコを吸うと、その覚醒作用により非常に心地の良い感覚が得られるのです。

昔、「今日も元気だ たばこがうまい!」とのポスターがあったそうですが、これもタバコの持つ覚醒作用を表したものと思います。私自身も、目覚ましとしてコーヒーや紅茶と合わせて、タバコを吸うことがしばしばあります。これは、カフェインとタバコの持つ覚醒効果を合わせることを狙ったものです。

さて、東京オリンピックに合わせて「飲食店を全面禁煙にしてはどうか?」といった議論が活発ですね。そんな中、このような記事が出ました。

 飲食店内禁煙、立ち消え 国の対策くすぶる 小さなバー、スナック例外 居酒屋へ拡大も
http://mainichi.jp/articles/20170209/ddp/041/010/007000c 

この、「小さなバー、スナック例外」というのは、かなり良い線を行っていると思うのです。
こうしたお店は一人で、もしくは少人数で行って長い時間滞在し、くつろいだり、会話を楽しむお店ですよね。 酔いが回った状態でタバコを吸って覚醒作用を得て、心地よい感覚を得ながら、バーのマスターやスナックのママ、そして他のお客さんと会話をするのは非常に楽しいことと思います。私も時折、水タバコ屋さんでそうした事を楽しんでいます。

なおかつ、こうしたお店は回転率があまり関係ないかと思われます。通常の居酒屋さんで喫煙可能ですと、場合によってはお酒や料理を出し終わった後も喫煙者が長時間居座り、回転率に影響が出る可能性がありますが、この種のお店ですとそうした影響は少ないと考えられますよね。

ですので、「通常の居酒屋さんは全面禁煙でも構わない、しかし小さなバーやスナックは喫煙OKでいいんじゃないか?」と私は考えています。

あとは、私がよく居座っている水タバコ屋さんにこうした議論がどう影響を与えるのかも気がかりです。某所に取材依頼を出したのですが、果たして採用して頂けるのか…?

以上、喫煙者の言い訳でした。




2017年2月17日金曜日

米 対シリア地上部隊派遣構想に関するアルアラビーヤの反応

米国防総省がシリア領内に対し、対ISIS作戦を目的とした大規模な地上部隊を派遣する構想を提案するのではないか?との報道がCNNによってなされていることは昨日2017年2月16日の記事( http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/02/cnn.html )に記した通りです。しかし、記事をご覧になった皆様方は、「無茶だ」と感じられた方が多かったのではないでしょうか。「トルコと組むのではないか?」あるいは「ロシアとの連携を緊密化する可能性もあるのではないか?」等々書いた私自身、(本当に介入が承認されるのか…?)と思いつつ書いておりました。

皆様と同様の思いを、中東のメディアも抱いていたようです。
以下、野口雅昭先生のブログより、米地上部隊派遣報道に関するサウジアラビアのメディア、アルアラビーヤのコメントを紹介します。

米地上部隊のシリア派遣(アラビア語メディアのコメント)
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/5177289.html 
(引用開始)
 
記事の要点のみ次の通り、ご参考まで

・米地上部隊のシリア派遣となると、これまでの米国の勢力(筆者注:戦略のミスタイプと思われる)の根本的な変更となる。
・米軍はこれまでも、多くの戦闘地域に派遣されてきたが、シリアは、多数の勢力、グループが争うという、これまでに米国が対処したことのない状況にある。
・ロシア軍機は、IS討伐ということでラッカとパルミラに多くの戦力を擁している。さらにデリゾールでは政府軍機が、ISに対して繰り返し空爆を繰り返しており、米軍が簡単に行けそうにもない。
・アレッポとその周辺にはISが陣取っているが、イドリブではアルカイダ系のシャム・ファタハ戦線の民兵の大きなプレゼンスがある。
・米軍の派遣には、空軍の支援が不可欠だが、そのためには米軍としては連絡したくはない相手との調整が必要になってくる(政府軍機およびイラン革命防衛隊やヒズボッラーのことか?)
・しかし、現在およびかっての軍事専門家は、トランプが公約した通りのISの早期掃討を実現するためには、米軍の大量派遣が必要であるとみている
(引用終了)

皆様方の懸念を代弁しているようなコメントかと思います。

シリア内戦は、ベトナム、アフガニスタン、イラク以上に、複雑な形で各種勢力が入り乱れている状況です。

そして、対ISISを考慮するならロシア、アサド政権のみならずそれを支援するヒズボラやイラン革命防衛隊とも連絡を取り、バッティングを避ける必要が出てくるでしょう。連絡・連携が不十分であれば、アサド政権やロシア軍機により米地上部隊が誤爆される可能性、米軍とヒズボラ、あるいはイラン革命防衛隊が交戦に至ってしまう可能性が生じてきます。現在空爆を行っている米主導有志連合とアサド政権・ロシア軍機は一定の住み分けができているようですが、果たして大規模な地上部隊の住み分けはうまくいくのでしょうか?

また、反体制派の中にも多様な勢力が存在します。比較的親欧米的な、いわゆる「穏健な反体制派」が存在する一方、コメント内にあるように、アルカイダ系統のシャーム・ファトフ戦線(旧ヌスラ戦線)のような勢力も存在します。 そうした勢力が米軍大規模地上部隊派遣を歓迎するとは考え難く、仮に米地上部隊と遭遇した場合には交戦に至る可能性も十分考えられるかと思われます。

 軍事面だけをとってみても、米大規模地上部隊派遣が数多くの懸念を抱えている事がわかります。

さらに、野口先生は政治面での課題を指摘していらっしゃいます。
(引用開始)
 軍事的には、以上の通りかと思いますが、より大きい政治的関係からは、そもそも敵対的関係に入ろうとしているイランとの関係をどうするのか、ロシアとの関係は(まあ、これはトランプとプーチンの関係で片が付くか?)、シリア政府との関係は?等の問題があります。
さらにより直接の問題としては、ラッカ攻略のためにはトルコとYPGの対立、敵対関係をどうにかしなければならないという問題もあります
(引用終了)

昨日の記事で述べた通り、2017年3月上旬には、米軍の対シリア関与に関して大きな決定が下される可能性が非常に高いと考えられますが、これらの政治的課題をこの数週間以内に解決することは到底困難でしょう。米露関係一つを取っても、以下のような報道が出たばかりです。

 米国防長官 ロシアとの軍事協力は難しい
 米ロ首脳会談の準備で合意ない─ロ大統領補佐官=インタファクス
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-putin-meeting-idJPKBN15W08U 


仮に米国による対シリア大規模地上部隊派遣構想が承認された場合、それは米国がイラク戦争以上の泥沼に引きずり込まれることを意味するのではないか?と不安を抱いています。

2017年2月16日木曜日

CNN報道 米 対シリア地上部隊派遣構想に関する備忘録

米国防総省がシリア領内に対し、対ISIS作戦を目的とした大規模な地上部隊を派遣する構想を提案するのではないか?との報道が流れています。

どうやらCNNのスクープらしく、日本語での報道もCNN日本語版が一番充実している印象です。

米国防総省、シリアへの地上部隊派遣を提案か 当局者が示唆

興味深いことに、この動きを予期していた論考が2017年2月8日の段階で存在していました。

トランプは入国禁止令の裏で「宣戦布告」していた シリア侵攻に向けて突き進むトランプ政権

この論考が出た時点では、「トランプ政権は対シリア大規模地上部隊派遣を行いたいのだな、ただそんな事が実現可能なのか?」といった印象を抱きましたが、CNNの報道を見るに、その構想が一歩あゆみを進めたのだ…といった感想です。

CNNの記事中にある
(引用開始)
 もし実現すれば、米軍がシリアで展開する軍事作戦の様相は一変する。承認されれば数週間以内に地上部隊が派遣される可能性もある。
(引用終了)

もしくは部谷氏の論考にある
(引用開始)
 今後、表層的な動きに心を奪われることなく、1カ月後にISIS打倒計画の原案が完成することを冷静に注視しておくべきだろう。
(引用終了)

の文言にある通り、2017年3月上旬には、米軍の対シリア関与に関して大きな決定が下される可能性が非常に高く、注目しておく事が必要と感じます。

さて、大統領の承認が得られ、トランプ政権が対シリア大規模地上部隊介入を決定した場合、いかなる形で作戦が進められるのでしょうか? 

可能性が高いと考えられるのは、トルコと組むという方法です。

個人的には、トルコの設置した「安全地帯」に相乗りする形で派兵すると考えます。
過去のブログ記事( http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/02/blog-post_10.html )で、『個人的にはトルコの設置した「安全地帯」にロシア、そしてトランプ政権や湾岸諸国が相乗りし、アサド政権も黙認する…といった予想をしています。』とぼんやりとした感想を述べた通りです。

また、野口雅昭先生も、本日付のブログで以下のような予想をしていらっしゃいました。

 米地上部隊のシリア派遣??
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/5176762.html 
(引用開始)
 最近米CIA長官がトルコを訪問し、エルドアンとも会談したと伝えられ、さらにエルドアンがこのところトルコ・自由シリア軍のユーフラティスの盾作戦は、ラッカの陥落までは続けられると何度か発言しており、もしかするとトルコと米国の間で、双方が協力してのラッカ攻略作戦が検討されている可能性も完全に排除はできないような気もします。
(引用終了)

CNN報道の以下の部分
(引用開始)
地上部隊を派遣する目的の1つには、クルド人勢力がトルコの利益を脅かす存在ではないことをトルコに納得させる狙いがあるようだ。一部の部隊をまずクウェートに展開させ、そこからシリアに移動させる可能性もある。
(引用終了)
これもまた、トルコの存在を匂わせます。

トルコ側の言動にも、興味深いものがあります。
まず、2016年10月18日の段階で、以下のような報道が出ていました。
米軍と合同作戦も=ISからラッカ奪還へ-トルコ大統領
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016101800811&g=isk

最近でも、エルドアンは以下のような発言を行っていました。
「シリアにおける作戦の最終目標はアル・バーブではなく、ラッカを含む地域からISISを一掃する事だ」といった具合でしょうか。これは、トルコ単独でできる事ではないでしょう。この発言がなされた2月12日の時点で既に、米国がトルコ側に共同作戦を持ちかけていた可能性もあるかと思います。

以上のように、トルコと組むのではないかと考えられる材料は多々存在するのですが、よりロシアとの協調を緊密にした形での部隊展開を行う可能性もゼロではないように思います。例えば、米軍部隊の揚陸をロシア軍が拠点としているタルトゥース港から行い、そこから部隊を展開する…といったシナリオは、可能性は低いもののゼロとも言い切り難いと考えます。現在行われているトルコ・ロシアによる共同空爆作戦に米軍も加わる可能性もあるかと思われます。

米・トルコ、米露関係と米国内世論を注視しつつ、米対シリア地上部隊派遣に関する何らかの決定が発表されるであろう3月上旬を待つのが望ましいかと考えます。

(追記)
イランもまた、今回の米 対シリア地上部隊派遣構想に関係してくるのであろうと考えます。入国禁止の大統領令や核合意関連、更には米・イスラエル首脳会談等で両者の関係は冷え込んでいます。そんな中、米国が対シリア派兵を行う事は、既にシリアに革命防衛隊等を展開させているイランのプレゼンスを相対的に引き下げる事となり、米国にとっては利益となるかと思われます。仮にロシアと緊密に協調する形での派兵となれば、ロシアにとってイランの利用価値が下がる事となり、イランのシリアにおけるプレゼンスはより低下することになると考えられます。

2017年2月15日水曜日

金正男暗殺、そして彼の思い出

拉致問題が日本中に知れ渡り、対北警戒感が高まっていた2001年、彼は成田空港で拘束されました。日本に工作員を送り込み、日本人を連れ去っていた恐怖の独裁国家を率いる金正日の後継候補No.1だと目されていたその男は、威厳の欠片も無い「木こりファッション」姿でこう言い放ったのです。「ディズニーランドに行きたかった…」

(なんだこいつは…?)

多くの日本人がそう思った事でしょう。そして、ネット上でアスキーアートが作られ、(北朝鮮にも俺達のような奴がいる!)と多くのネット民から愛されることとなりました。そんな彼も、もうこの世にはいないのです。金正男は、クアラルンプール国際空港で女工作員2人組に暗殺されたのですから。

私個人の見立ては、Twitterに記した通りです。


中朝関係が少なくとも中央政府レベルでは悪化している事は、様々な側面から読み取れます。張成沢粛清にしてもそうですし、中国が極度に嫌がる韓国へのTHAAD配備を招いた元凶も、結局は北朝鮮です。昨今では、このような論考も掲載されました。

中国、北朝鮮を「仮想敵」視
http://jp.reuters.com/article/idJP2017013001001820 

このような状況下で、マカオに在住しており中国が「手駒」 として使用しうる金正男の存在は、金正恩にとり極めて目障りだった事でしょう。

北朝鮮有力者の亡命が相次いでいるのは、以下の聯合ニュース記事からわかります。16日に金正日の誕生日を控える中、見せしめとしては最高のタイミングだったのではないでしょうか。

[時論]相次ぐ北朝鮮エリートの脱北 韓国の備えは万全か 

備忘録代わりに、2017年2月15日午前6時放送(BS1にて同午前8時10分頃から和訳版放送)の韓国KBSの報道を実況した際のツイートも掲載しておきます。





多くのネット民と同様、私も金正男をネタにし、愛してきました。そんな彼がもうこの世にいない事には寂しさを隠せません。

今夜は、ムダヅモの「北の巻」でも見ましょうか。


「ムダヅモ無き改革」 第1話「北」の巻(仮)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm9247437 

2017年2月14日火曜日

蛸は宇宙人?ネイチャー誌? Twitter「トレンド」に見る日本へのスプートニクの浸透率

まずはこちらの画像をご覧ください。こちらは、2017年2月14日14時34分現在の日本のTwitterトレンドです。
この中に「ネイチャー誌」との項目があります。実は、これはロシア国営プロパガンダメディアであるスプートニクの記事が日本のTwitterユーザーに数多く共有された結果なのです。元となった記事はこちら。

蛸は宇宙人である 学説がネイチャー誌に
https://jp.sputniknews.com/science/201702143337545/ 

こうした、「バカニュース」とでも言うべき記事を、スプートニクは数多く配信しています。昨年の12月23日には、以下の記事が多くの日本のTwitterユーザーに共有された結果、「クロコダイルの強姦」がTwitterトレンド入りする珍事が起こりました。

クロコダイルの強姦試みた3人の男が死亡、南アフリカーマスコミ
https://jp.sputniknews.com/incidents/201612233170727/ 

ロシア国営プロパガンダメディアの記事が日本の多くのTwitterユーザーに共有されている事には懸念を覚えます。現在は「バカニュース」が多く共有されている状態であり問題は無いと言えるでしょうが、これを契機に、一部であれ、日本のTwitterユーザーがスプートニクを信頼に値するメディアと判断しかねないと考えるからです。スプートニクはあくまで、ロシアのプロパガンダメディアであるにも関わらず…

「フェイクニュース」が話題になる事が多いご時世ですが、個人的には「バカニュース」にも一定の警戒心を持つべきだろう、と考えております。

2017年2月13日月曜日

トルクメニスタン大統領選挙実施

北朝鮮による弾道ミサイル発射で日米韓が騒然となった昨日2017年2月13日、「中央アジアの北朝鮮」と呼ばれることもある中央アジアのトルクメニスタンで大統領選挙が行われていました。かの国が「中央アジアの北朝鮮」と呼ばれる所以は、前代ニヤゾフ大統領、そして現在のベルドイムハメドフ大統領による個人崇拝的な権威主義的独裁体制を敷いているからです。ただ、かの国は天然ガス資源を有しており、北朝鮮のように貧しい国家とは言い難い他、「永世中立」を宣言しており国際社会に特段影響力を発揮しようとしないのが、北朝鮮と異なる点です。

今回2017年のトルクメニスタン大統領選の概観には、以下のNHKの記事が適しています。

トルクメニスタン大統領選 現職の3選が有力視
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170212/k10010874211000.html

トルコ国営放送TRT日本語版でも、この事を取り上げていました。
  
今日はトルクメニスタン大統領選挙投票日、320万人が投票所へ
http://www.trt.net.tr/japanese/shi-jie/2017/02/12/jin-ri-hatorukumenisutanda-tong-ling-xuan-ju-tou-piao-ri-320mo-ren-gatou-piao-suo-he-670582 
淡々とした記述で、特に否定的な事は書かれていません。

私がNHK BS1「キャッチ!世界の視点」内で視聴したロシアTVのニュースでも、トルクメニスタン大統領選挙に関しては「民主化路線を推し進めている」とのアナウンスがなされていたり、有権者の好意的な声を紹介したり、CISやSCO(上海協力機構)の選挙監視団が派遣され選挙が民主的に行われた旨を報じるなどしていました。ロシアがトルクメニスタンの権威主義的独裁政権が安定して続いて欲しい事を示しているかと存じます。

気がかりなのが、かの国の経済です。先に紹介したNHKの記事内より引用します。
(引用開始)
世界4位の天然ガスの埋蔵量が確認されているトルクメニスタンは、ここ数年のエネルギー価格の低迷などで成長にブレーキがかかっていて、資源依存からの脱却が課題となっています。
(引用終了)

2011年頃のいわゆる「アラブの春」で中東の権威主義的独裁体制が続々と倒れた要因は、それらの体制がリーマンショックに伴い、国民に十分にペイできなくなった事と言えるかと思います。それだけに、今後もベルドイムハメドフ政権が国民に不満を抱かせないだけの十分なペイが可能な体制を構築できるかが焦点となるかと存じます。

(追記)
大統領選の結果の詳細がわかりました。以下、NHK記事です。

トルクメニスタン大統領選 現職3選 約98%の得票

あまり目新しい記述はありませんが、最後に気になるものが。
(引用開始)
ベルドイムハメドフ大統領は、これまで産業の多様化を目指すうえで、日本との協力を重視していて、おととし行われた安倍総理大臣との首脳会談では、ガス処理プラントの整備事業に日本企業が参入し、両国の協力を進めていくことで一致しています。
(引用終了)

権威主義的独裁体制であること、並びに中央アジアには中国資本の進出も目立つことから、一筋縄ではいかない案件かとは思いますが、こちらにも注目したいところです。おそらくは、トルクメニスタン側にも中国への依存度を下げるという観点で、利益があるものと思われます。

安倍首相を揶揄した朝日テヘラン支局神田支局長、スプートニク沙汰に

ロシア国営プロパガンダメディアのスプートニクが、朝日新聞テヘラン支局神田支局長がTwitter上で炎上していた事を記事にしています。スプートニク日本語版の記事をご覧ください。

朝日新聞支局長、安倍首相をツイッタで揶揄
https://jp.sputniknews.com/japan/201702133334603/ 

スプートニクの記事の元となった読売新聞の報道は、以下の記事かと推測されます。

安倍首相を「揶揄」、朝日新聞支局長が投稿削除
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170213-OYT1T50019.html

スプートニク記事、並びに元となった読売の記事をご覧になればわかるよう、神田支局長は問題となったツイートを削除したのち、謝罪するツイートを投稿しています。削除したツイートのスクリーンショットと思しきものを私も拝見しましたが、確かに不快感を覚えるものでした。しかし、謝罪ツイートを行なっていることから、これ以上問題にすることもないかと愚考します。

日本が中心であったネット炎上が、海外のプロパガンダメディアの記事のネタになってしまう、珍しい事例でした。

2017年2月12日日曜日

トルコ料理を食べに行こう!

昨日、2017年2月11日にトルコ料理を頂きました。フレンチ、中華と並んで時に「世界三大料理」と呼ばれる事もあるトルコ料理。一体どのようなものなのか?ぜひご覧ください。

今回お邪魔したお店は、東京 新宿西口にあるチャンカヤさん。
http://www.cankaya.jp/

まずは乾杯です。
私はトルコビール「エフェス」をチョイス。苦味が少なくまろやかな味わいで、どなたにもおすすめできるビールです。

前菜はチーズを選びました。
羊の乳から作られた、少々塩辛いチーズです。これがトマトとビールに実によく合います。

続いてメインのケバブ盛り合わせ。ご飯もつけていただきました。

牛肉、羊肉、鶏肉と、どれを取ってもスパイシーで美味。羊肉はドネル・ケバブとシシ・ケバブがありました。これがまた、ビールにも油で炒めたご飯にも実に合うのです。

続いて海老と野菜の煮込み。
海老の旨味がスープによく出て、野菜にも染み込んでいます。正直言って、皿まで舐めてしまいたいレベルの美味さでした。

最後にトルコ風の揚げナスです。
中華料理と異なり、唐辛子の辛さは抑えられています。ピリ辛とも言えないレベルの辛さですね。ひき肉の旨味が染み込んだソースと揚げナスはベストマッチです。

デザートには、中東のスイーツであるシロップがたっぷりと染み込んだ「バクロワ」を、トルココーヒーと共にいただきました。トルココーヒーはコーヒーの粉ごとカップに入っており、上澄みだけを飲むものです。

今回は4名で行きましたが、これだけ味わって一人あたり4500円程度だったと記憶しています。

美味しくてリーズナブルなトルコ料理、皆様もぜひどうぞ!


2017年2月11日土曜日

戦史研ブログ路線におけるBlogspotのすすめ

各大学の戦史研の皆様には、非常に深い知見を持った方々が多く、常日頃感心させられる事しきりです。中には、軍事専門誌に寄稿できるのではないか?と思われるような方すらいらっしゃいます。そのような知見を、Twitterのみならずブログにおいても発揮する事は、大きな意義のある事と感じます。

各社がブログサービスを提供する中、戦史研の皆様に適しているのは、私も現在使用しているBlogspotではないかと考えます。理由は以下の通り。

・Googleが提供しており、Googleアカウントに関連づけられたサービスである
 この点はBlogspotの大きな強みではないかと思います。Googleアカウントに関連づけられている事は、GmailやGoogleグループ、GoogleドキュメントやGoogleハングアウト(Skypeに類似した音声通話サービス)を利用することで戦史研内の連絡や共同作業もスムーズに進める事が可能です。また、Twitterアカウントが何らかの理由で凍結されたとしても、Googleの提供するSNSサービスGoogle+にて情報発信(生存確認?)を行う事ができます。

・広告が設置できる
 先日申し上げた通り当ブログには広告を設置しています( http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/02/blog-post_1.html )。Blogspotでは広告の設置が可能なのです。発信するコンテンツによっては一定の収入が得られ、資料代に充てることが可能ではないかと考えます。

・インターフェイスがシンプルで書きやすい
Blogspotの記事執筆のインターフェイスはこのようなものです。
こうしたシンプルなデザインで、ストレスなく記事を執筆することが可能です。

以上の3点より、戦史研ブログ路線ではBlogspotを選択するのが良いのではないか?と愚考します。

2017年2月10日金曜日

軍事プレゼンスの発揮と「安全地帯」 シリア内戦におけるトルコの存在感の変化

シリア内戦におけるトルコは、以前は反体制派の戦闘員・武器類の経由地点、もしくは難民の受け入れ先、あるいは有志連合への空軍基地の提供といった意味合いで存在感を発揮してきた印象ですが、2016年8月からのトルコ軍対シリア領内地上部隊派遣、そして同年12月のロシアと共同で主導した停戦合意、更にはトルコ・ロシアの共同作戦による空爆…と、この半年程でトルコのシリア内戦における存在感が変化したような印象です。

昨今では、このようなニュースもありました。以下、BBC日本語版の記事をご覧ください。

ロシア誤爆でトルコ兵士3人死亡 プーチン大統領が弔意
http://www.bbc.com/japanese/38927336 

2015年11月の、トルコ空軍F-16によるロシア空軍Su-24の撃墜事件により、両国の関係が極度に悪化した事が信じがたいほど、関係改善がなされています。

また、トルコの「安全地帯」設置も注目に値します。この事は、以前のブログ記事で記述した通りです。
http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/01/blog-post_26.html 

「安全地帯」に関しては、アサド政権側から見れば主権の侵害に当たるゆえ反発が予想されますが、アサド政権を支援するロシアと良好な関係を維持しているトルコを見るに、アサド政権側もそれほど激しい反発はせず、黙認するのではないか?といった印象を抱いています。

というわけで、個人的にはトルコの設置した「安全地帯」にロシア、そしてトランプ政権や湾岸諸国が相乗りし、アサド政権も黙認する…といった予想をしています。

ロシアとの関係改善、軍事プレゼンスの発揮、そして「安全地帯」の設置と、シリア内戦における存在感に変化が見られるトルコに関して、今後とも注視していきたいと考えます。

2017年2月9日木曜日

プーチン大統領訪日と北方4島元住民の皆様の思い

記憶に新しい2016年12月のプーチン大統領訪日。北方4島での共同経済活動に向けた交渉を開始することで合意するなど、今までとは少々変わった交渉ではありましたが、領土問題に関して言えば目立った進展は無かったと言えるかと思います。

この現状に対し、北方4島元島民の方々はどう思っていらっしゃるのか。
朝日新聞北海道報道センターの関根和弘記者が関連記事を執筆していらっしゃいました。

 (記者有論)北方領土巡る首脳会談 「成果」に失望深い元島民 関根和弘
http://www.asahi.com/articles/DA3S12788132.html 

関根さんは読者との繋がりと非常に大切になさっている方で、私もSNS上でのやり取りの他、直接お目にかかってお話を伺った事も何度かあります。非常に誠実に人と向き合い、取材をなさっている素晴らしい記者の方との印象を抱いております。
上坂すみれさんのファンの方には、こちらの動画を作成した記者の方、と言えばお分かりになるでしょうか?

そのような関根さんの執筆した記事であるからこそ、この記事を私は深刻に感じます。私はプーチン大統領訪日と首脳会談を評価していましたが、その考えは多くの元島民の方々とギャップのあるものだったのです。登録して記事を全文ご覧いただければわかりますが、「政治利用された」と感じた元島民の方もいらっしゃったとのことで、このギャップは極めて深刻なものです。

Twitter上でのやり取りにて、関根さんより次の記事のご紹介もして頂きました。

択捉・国後めぐり深い溝 岩下明裕さん
http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20161208011610001.html
こちらのインタビューはプーチン大統領訪日前のものですが、それを終えた今読むに、岩下先生は非常に的確な分析をなさっていたのだとわかります。特に共同経済開発に関しては、日本側は特別な法制度と言うものの、実質的にはロシアの法律が適用されると考えられるだけに非常に気掛かりです。

プーチン大統領訪日が決まったと聞いた際、私は「ひょっとして2島先行返還がなされるのではないか」とまで期待していました。訪日が近づくにつれ、多くのロシア研究者の方々が「期待しすぎない方が良い」との論考を出したために、さすがに考えを変えましたが、訪日が終わるまで楽観的な印象を抱いていたのは事実です。

元島民の方々とのギャップのある考えを抱いていたこと、プーチン大統領訪日に過剰な期待をしてしまった事を深く恥じる思いです。

2017年2月8日水曜日

ロシアは再びアフガニスタンに進出するのか?

ウェッジweb版に、岡崎研究所による興味深い記事が掲載されました。パキスタンのジャーナリスト、アーメド・ラシッドによれば、米国がアフガニスタンにおいて手詰まりの状況に陥っているのに対し、ロシアがタリバンへの接近を通じて再びアフガニスタンでのプレゼンスを確保していようとしているというのです。以下、当該記事をご覧ください。

 米国がアフガンに作った真空にロシアが進出

英FTに対しコラムの寄稿を行なったアーメド・ラシッドはタリバン研究の第一人者と言え、「タリバン―イスラム原理主義の戦士たち」と評する大著の著者としても知られています。それを踏まえれば、このコラムも真剣に受け止める必要があるかと存じます。

こうしたロシアの動きに関して、当該記事では「コストのかからない対米牽制ではないか?」との旨の分析をしていますが、私は対ISISの意味合いが存在すると考えています。

現在、アフガニスタンには親米ではあるが脆弱であるアフガニスタン政府、タリバン、そしてISISに忠誠を誓った勢力の3つが存在し互いに敵対し合う、いわば三つ巴の様相を呈しています。この状況は、以下のニューズウィークの記事に見ることができます。

 アフガニスタンを脅かすISISの戦線拡大
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/01/post-3525.php

ISISの中央アジアへの浸透を防ぐ為、ロシアは脆弱なアフガニスタン政府より、タリバンと接近する道を選んだのではないかと愚考します。

アフガニスタンの現状分析を行なった本としては、「タリバンの復活―火薬庫化するアフガニスタン」及び 「アフガン・対テロ戦争の研究――タリバンはなぜ復活したのか」が推奨できます。後者は2016年3月26日に発行されており、ISAF終了以降のアフガニスタンの情勢も反映されています。

(2017年2月10日追記)
アフガニスタンに駐留する米軍のトップであるニコルソン司令官が、米上院公聴会においてロシアとタリバンの接近に言及した旨です。公人が議会公聴会の場で証言した意味合いは極めて大きいと思います。

米軍司令官 アフガニスタンに数千人の兵力増強を
(引用開始)
 また、ニコルソン司令官はロシアがタリバンに急接近し関係を強めていると指摘し、「ロシアの関与が現地の情勢を複雑にしている」と述べて、ロシアとタリバンの関係に強い警戒感を示しました。
(引用終了)

孤立主義的なトランプ政権が、軍の増派要請に応じるかは極めて不透明と言えます。