皆様と同様の思いを、中東のメディアも抱いていたようです。
以下、野口雅昭先生のブログより、米地上部隊派遣報道に関するサウジアラビアのメディア、アルアラビーヤのコメントを紹介します。
米地上部隊のシリア派遣(アラビア語メディアのコメント)
(引用開始)
記事の要点のみ次の通り、ご参考まで
・米地上部隊のシリア派遣となると、これまでの米国の勢力(筆者注:戦略のミスタイプと思われる)の根本的な変更となる。
・米軍はこれまでも、多くの戦闘地域に派遣されてきたが、シリアは、多数の勢力、グループが争うという、これまでに米国が対処したことのない状況にある。
・ロシア軍機は、IS討伐ということでラッカとパルミラに多くの戦力を擁している。さらにデリゾールでは政府軍機が、ISに対して繰り返し空爆を繰り返しており、米軍が簡単に行けそうにもない。
・アレッポとその周辺にはISが陣取っているが、イドリブではアルカイダ系のシャム・ファタハ戦線の民兵の大きなプレゼンスがある。
・米軍の派遣には、空軍の支援が不可欠だが、そのためには米軍としては連絡したくはない相手との調整が必要になってくる(政府軍機およびイラン革命防衛隊やヒズボッラーのことか?)
・しかし、現在およびかっての軍事専門家は、トランプが公約した通りのISの早期掃討を実現するためには、米軍の大量派遣が必要であるとみている
(引用終了)
皆様方の懸念を代弁しているようなコメントかと思います。
シリア内戦は、ベトナム、アフガニスタン、イラク以上に、複雑な形で各種勢力が入り乱れている状況です。
そして、対ISISを考慮するならロシア、アサド政権のみならずそれを支援するヒズボラやイラン革命防衛隊とも連絡を取り、バッティングを避ける必要が出てくるでしょう。連絡・連携が不十分であれば、アサド政権やロシア軍機により米地上部隊が誤爆される可能性、米軍とヒズボラ、あるいはイラン革命防衛隊が交戦に至ってしまう可能性が生じてきます。現在空爆を行っている米主導有志連合とアサド政権・ロシア軍機は一定の住み分けができているようですが、果たして大規模な地上部隊の住み分けはうまくいくのでしょうか?
また、反体制派の中にも多様な勢力が存在します。比較的親欧米的な、いわゆる「穏健な反体制派」が存在する一方、コメント内にあるように、アルカイダ系統のシャーム・ファトフ戦線(旧ヌスラ戦線)のような勢力も存在します。 そうした勢力が米軍大規模地上部隊派遣を歓迎するとは考え難く、仮に米地上部隊と遭遇した場合には交戦に至る可能性も十分考えられるかと思われます。
軍事面だけをとってみても、米大規模地上部隊派遣が数多くの懸念を抱えている事がわかります。
さらに、野口先生は政治面での課題を指摘していらっしゃいます。
(引用開始)
軍事的には、以上の通りかと思いますが、より大きい政治的関係からは、そもそも敵対的関係に入ろうとしているイランとの関係をどうするのか、ロシアとの関係は(まあ、これはトランプとプーチンの関係で片が付くか?)、シリア政府との関係は?等の問題があります。
さらにより直接の問題としては、ラッカ攻略のためにはトルコとYPGの対立、敵対関係をどうにかしなければならないという問題もあります
さらにより直接の問題としては、ラッカ攻略のためにはトルコとYPGの対立、敵対関係をどうにかしなければならないという問題もあります
(引用終了)
昨日の記事で述べた通り、2017年3月上旬には、米軍の対シリア関与に関して大きな決定が下される可能性が非常に高いと考えられますが、これらの政治的課題をこの数週間以内に解決することは到底困難でしょう。米露関係一つを取っても、以下のような報道が出たばかりです。
米国防長官 ロシアとの軍事協力は難しい
米ロ首脳会談の準備で合意ない─ロ大統領補佐官=インタファクス
仮に米国による対シリア大規模地上部隊派遣構想が承認された場合、それは米国がイラク戦争以上の泥沼に引きずり込まれることを意味するのではないか?と不安を抱いています。
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