2017年9月13日水曜日

原発は弾道ミサイルの攻撃対象となりうるか? Twitterの集合知を活用して

Facebook上で気になる広告を見かけたので、Twitterの集合知を活用すべく、以下のような問いかけをしてみました。

まず、弾道ミサイルの特性上ピンポイントでの攻撃は不可能ですので、原子炉に直撃するというシナリオは除外します。また、核弾頭の場合はそのまま人口が密集する都市部に着弾させた方が明らかに高い被害が見込めるのでこれも除外します。周辺施設が破壊され電源喪失等に至る、つまりあの3月11日に福島第一原発で起きたような事態を弾道ミサイルで再現できるのか、またそれは軍事的に合理的な手法か問うてみたわけです。

頂いたご意見は以下のようなもの。

まず、「周辺施設であっても通常弾頭の弾道ミサイルによる破壊は困難」というご意見。
確かに原子力発電所の場合、原子炉建屋そのものだけでなく、その周辺施設も場合によっては地下に造られている等かなり堅牢なものです。これを通常弾頭の弾道ミサイルを用いて破壊するには、相当数のミサイルを使用しなければならないでしょう。

次に、「より効果的な手法が存在する」というご意見。これは「原発への攻撃を考慮するとゲリラ・コマンドによる攻撃の方が優先度が高い」というものと、「放射能汚染を意図するなら、ダーティーボムを用いれば良い」とのご意見を頂きました。弾道ミサイルによる周辺施設の破壊というまどろっこしい手法を取らずとも、もっとシンプルな手法が存在するわけです。

そして、「より優先的な目標が存在する」というご意見。朝鮮半島有事を考えると、北朝鮮側として第一に叩きたいのは三沢・横田・岩国・嘉手納等といった米航空戦力の拠点となりうる場所や、横須賀・佐世保等といった米海軍戦力の拠点となる場所でしょう。二義的には、指揮系統を混乱させるべく首都たる東京が目標となるのかもしれません。そして、弾道ミサイル防衛システムを突破するために、同じ目標に向けて複数飛ばさねばならない。日本列島を射程に収めるノドンの総数が200発、発射台数が50基程度と見積もられているそうですから、北朝鮮側としても結構カツカツですよね。こう考えると、原子力発電所の攻撃目標としての価値は相当下がります。

頂いたご意見を大まかに3つに分類してご紹介しましたが、これを見るにそもそも破壊が困難であるという観点、攻撃手法の観点、目標選定の観点、いずれの観点でも弾道ミサイルによる原子力発電所に対する攻撃は軍事的合理性を欠くものであり、想定し難いとの結論に至ります。

福島への風評被害は未だ収まっているとは言えませんし、特に8月末の日本列島上空を通過する形での「火星12」発射実験で国民の不安が高まっているこんなご時世。原発への弾道ミサイル攻撃を心配する方も当然いらっしゃるでしょう。そうした方々の不安払拭に向けて、政府やメディアは丁寧な説明を行う必要があるのでしょうね。

そして、多くの人々の理想である脱原発に向けた活動を行う際、弾道ミサイルの脅威を掲げるのは悪手であるとも言えるのでしょう。

Twitter上にてご意見を頂いた皆様方、この場をお借りして改めてお礼申し上げます。

(今回法的な議論は省くことにしました。仮定そのものが原子力発電所の保護を定めたジュネーヴ諸条約第一追加議定書第56条をはじめとする各種国際人道法に反するものである事は明らかだからです。)

メキシコ海軍練習帆船「クアウモテク」来日

チキンブリトー映画「バトルシップ」放送の余韻が冷めやらぬ中、メキシコ海軍の練習帆船「クアウモテク」が来日、晴海に停泊中とのことで見学してきました。

クアウモテク、とにかくシブいですね!
まずはホストシップの護衛艦「おおなみ」の見学といきましょう。

気合が入っています。 演習でも強い艦なのでしょうか?
3連装魚雷発射管を実際に使用する際の様子もよく分かります。
艦橋には防弾板が施されています。アデン湾での海賊対処任務に際し付けられたとか。
後部甲板へと行ってみます。ヘリが着艦する際の補助に用いられるベアトラップ。
ヘリ離着艦時の管制施設を見学できました。

内部はこのように計器が並んでいます。
では「クアウモテク」の見学へ。これがシンボルのようです。
厨房からはほんのりいい香りが漂ってきます。
 これが操舵設備でしょうか?

国を代表するだけあって、非常に大きな国旗が艦尾に掲げられています。
実は、当日の晴海にはもう1隻帆船が停泊していました。海王丸です。
というわけで、非常に貴重な経験になりました。

メキシコと日本の末永い友好を願って!

2017年9月9日土曜日

FPSと国際人道法 赤十字国際委員会の取り組み

赤十字国際委員会の日本版アカウントが、このようなツイートをしているのを見かけました。

どうも赤十字国際委員会が、リアル系FPSとして名高い(そして味方に迷惑をかける気しかしないので手を出せていない)ARMAと組んだらしい。
そして、
> なお、このキャンペーンは1つの目的として、プレイヤーに対する「罰」や強制された勉強的な内容でない、プレイヤー自身がゲーム上で取った行動の結果を通じて、国際人道法に対する理解を深めるという、ユニークな試みにも挑戦しています。

とある。興味深い試みです。

どうも、赤十字国際委員会はFPSに対してかなりの問題意識を抱いているようなのです。
以下のリンク先をご覧頂ければ、赤十字国際委員会の危機感をうかがえるかと存じます。

戦争のリアリティーを追求したゲームに関するQ&A
http://jp.icrc.org/2013/10/29/291013qa/ 

国際人道法というフィルターを通して見ると、確かにお行儀の良くない描写を含んだFPSも少なくないです。

例えばCoD4シングルのカレド・アル=アサド束縛ミッション。
アサドを捕らえた後、プライス大尉はアサドをボコボコに殴った挙句 (もう会いたくない…)、射殺してしまいますよね。

CoD4シングルのストーリー上当然の流れなのですが、プライス大尉のそれは捕虜の人道的待遇を定めた国際人道法上の観点では問題のある行為だと言うことができます。

CoD:MW2は空港で民間人を大量虐殺する場面から始まりますし、CoD:BOは拷問を受けている主人公の回想という形でストーリーが進みます。いずれも法的には問題を抱えた描写と言えます。

赤十字国際委員会が危機感を覚えるのもある意味当然のことなのかもしれません。
(意外にも、一見残虐に見えるCoD4のAC-130ミッションでは国際人道法をきちんと守っています。民間車両や礼拝施設たる教会といった法的に保護対象となるものは攻撃対象から外されているのです)

 そして、こうしたゲームそのものを禁止すべく動くのではなく、むしろゲーマーや制作企業を取り込んで国際人道法に対する意識を高めようとしている赤十字国際委員会の姿勢は、大いに評価されるべきでしょう。

ゲームの広報効果は、例えば米陸軍がAmerica'sArmy(https://www.americasarmy.com/) を製作したように、高いものと見ることができます。今回製作されたArma3のDLC「Laws of War」も、国際人道法への意識啓発に大いに役立ってくれるのではないでしょうか。

他タイトルにもなんらかの形で、こうした動きが波及するといいなと感じる次第です。
CoDやBFのシングルミッションなど、こうした要素を組み込める余地があると思います。