2017年1月31日火曜日

ばいきんまんがジャムおじさんを攻撃しない国際法上の理由とは

どこが出どころかわからないですが、Twitter上でこんなコピペが流行しています。

「ジャムおじさんを攻撃すれば全て終わるのに攻撃しないバイキンマンは、ジュネーブ条約第一追加議定書第54条の「いかなる場合に置いても住民の生存に不可欠なものを供給する施設を攻撃して、その結果住民を飢餓の状態に置くような措置をとってはならない」を遵守している可能性が非常に高い。」

しかし、このコピペには致命的な誤りがあります。というのも、ジュネーブ条約第一追加議定書は「国際的武力紛争」において適用されるものであるからです。ストーリーを考慮するに、アンパンマンとばいきんまんは一つの国家の領域内で争っていると考えられ、ばいきんまんの行為が「国際的武力紛争」に該当するとは考え難いでしょう。

両者は長期間争っているものの、死傷者を出していない点から烈度はかなり低いと考えられ、「非国際的武力紛争」にも該当しないかと考えられます。これは、タジッチ事件中間判決を鑑みれば明らかです。

よって、ばいきんまんが行なっている行為は「内乱」と見るのが妥当であると考えられます。「内乱」に適用されるのは、1949年8月12日のジュネーヴ諸条約共通3条、及び慣習国際法です。

まずは前者を見てみましょう。 ( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/gc4.htm )
(引用開始)
第三条〔国際的性質を有しない紛争〕 締約国の一の領域内に生ずる国際的性質を有しない武力紛争の場合には、各紛争当事者は、少くとも次の規定を適用しなければならない。

 
(1) 敵対行為に直接に参加しない者(武器を放棄した軍隊の構成員及び病気、負傷、抑留その他の事由により戦闘外に置かれた者を含む。)は、すべての場合において、人種、色、宗教若しくは信条、性別、門地若しくは貧富又はその他類似の基準による不利な差別をしないで人道的に待遇しなければならない。
 このため、次の行為は、前記の者については、いかなる場合にも、また、いかなる場所でも禁止する。

 
(a) 生命及び身体に対する暴行、特に、あらゆる種類の殺人、傷害、虐待及び拷問


(b) 人質


(c) 個人の尊厳に対する侵害、特に、侮辱的で体面を汚す待遇


(d) 正規に構成された裁判所で文明国民が不可欠と認めるすべての裁判上の保障を与えるものの裁判によらない判決の言渡及び刑の執行

(2) 傷者及び病者は、収容して看護しなければならない。
 赤十字国際委員会のような公平な人道的機関は、その役務を紛争当事者に提供することができる。
 紛争当事者は、また、特別の協定によって、この条約の他の規定の全部又は一部を実施することに努めなければならない。
 前記の規定の適用は、紛争当事者の法的地位に影響を及ぼすものではない。

ばいきんまんは、敵対的行為に直接参加しない者として、ジャムおじさんを人道的に待遇し、攻撃していないものと考えられます。

また、パン工場への攻撃を行わないのは、軍事目標主義や文民たる住民の生存に不可欠な物の保護といった慣習国際法を遵守しているものと考えられます。アンパンマンの世界においては、ジャムおじさんのパン工場が確認できる唯一のパン工場であり、この工場が破壊されれば住民が飢餓状態に陥ることは容易に予想できます。

 以上の点より、ばいきんまんがジャムおじさんを攻撃しない理由はジュネーヴ諸条約共通3条、及び慣習国際法を遵守しての事だと考えられます。

しかし、ばいきんまんは時に人質をとったり、 かびるんるんといった生物兵器と思しき兵器を運用したりしています。これは、ジュネーヴ諸条約共通3条違反や、戦闘員と文民を区別する原則に基づき、国際法違反として厳しく追及されるべきではないでしょうか?

イズムィコさんが専門誌に書いた論文が期間限定でタダで落とせるぞ!

現在、公益財団法人「日本国際問題研究所」発行の「国際問題」(1・2月合併号)PDF版が無料でダウンロード、閲覧できるのでご紹介。

http://www2.jiia.or.jp/BOOK/

今回の執筆陣は安全保障関連の若手研究者の方々が中心です。
慶応の土屋先生、神保先生、法政の森先生、北大の鈴木先生、そしてイズムィコさんという超豪華メンバー。
是非ともダウンロード推奨です。

2017年1月30日月曜日

オペちゃんに聞く、ポーランド民兵組織復活の兆し? そしてかの国の不安定な政治体制

Twitter上でお馴染み、ワルシャワ在住のポーランド人青年オペちゃん(@OPERATORCHAN)が興味深いツイートをしていました。
許可を頂いたので、まずは転載します。







領土防衛軍なる組織が復活する兆しを見せていること、そして、国防大臣と軍との関係が悪化していること、ポーランド現政権が不安定な状況下にあることがおわかり頂けるかと存じます。

彼とTwitter上にてやり取りしたところ、まず「士官の自首」は「辞任/辞職」の誤記であること、次に領土防衛軍なる組織が本来はポーランド軍の指揮下にある補助戦力として置かれているものの、現実的には有事に正規軍が損耗した際ゲリラ戦を行う民兵組織としての性質が強いこと、更には国防大臣が徴兵制の復活にまで言及していることも判明しました。

私はポーランド内政に関しての知識をそれほど持ち合わせているわけではありませんが、右派政権と称される事の多い現政権(なんと中絶禁止法案まで危うく議会で通りそうになった)はとりわけ彼の住むワルシャワといった都市部ではそれほど支持を受けないと推測されますし、欧州共通の問題として失業率の高さといった経済面の問題が、ポーランド現政権を不安定化させているのだろうと考えます。経済問題と、領土防衛軍参加者に支払われる報酬は無関係ではないのだろうと思います。

そして、領土防衛軍や徴兵制復活といった議論が浮上している事は、NATO正面に位置するかの国の現政権がいかに対露脅威を認識しているか、如実に示しています。対露脅威を特に敏感に認識している国として、電子政府化を行ったエストニア等バルト3国が例として挙げられる事が多いですが、ポーランドもそれに近い対露脅威認識を持っているようです。

ポーランドの政軍関係に関しては、ワルシャワ在住の彼すらよくわかっていない状況で私も正直言ってわかりません。軍の予算や装備調達、部隊の充足率等が問題となっている可能性があると愚考します。

ちなみに、ポーランドが領土防衛軍を復活させ、有事に民兵としてゲリラ戦を行っても国際法上の保護は受けられます。まず、捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(捕虜条約 https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/gc3.htm )第4条2項に民兵に関する規定が存在します。
(引用開始) 

(2) 紛争当事国に属するその他の民兵隊及び義勇隊の構成員(組織的抵抗運動団体の構成員を含む。)で、その領域が占領されているかどうかを問わず、その領域の内外で行動するもの。但し、それらの民兵隊又は義勇隊(組織的抵抗運動団体を含む。)は、次の条件を満たすものでなければならない。


(a) 部下について責任を負う一人の者が指揮していること。


(b) 遠方から認識することができる固着の特殊標章を有すること。


(c) 公然と武器を携行していること。


(d) 戦争の法規及び慣例に従って行動していること。
(引用終了)
更に、1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(第1追加議定書 https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/ap1.htm )43条1項と44条1項、3項に基づきその条件は緩和されます。
(引用開始)
第四十三条 軍隊
1 紛争当事者の軍隊は、部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織され及び武装したすべての兵力、集団及び部隊から成る(当該紛争当事者を代表する政府又は当局が敵対する紛争当事者によって承認されているか否かを問わない。)。このような軍隊は、内部規律に関する制度、特に武力紛争の際に適用される国際法の諸規則を遵守させる内部規律に関する制度に従う。
 第四十四条 戦闘員及び捕虜
1 前条に規定する戦闘員であって敵対する紛争当事者の権力内に陥ったものは、捕虜とする。
3 戦闘員は、文民たる住民を敵対行為の影響から保護することを促進するため、攻撃又は攻撃の準備のための軍事行動を行っている間、自己と文民たる住民とを区別する義務を負う。もっとも、武装した戦闘員は、武力紛争において敵対行為の性質のため自己と文民たる住民とを区別することができない状況があると認められるので、当該状況において次に規定する間武器を公然と携行することを条件として、戦闘員としての地位を保持する。
(a)交戦の間
(b)自己が参加する攻撃に先立つ軍事展開中に敵に目撃されている間
この3に定める条件に合致する行為は、第三十七条1(c)に規定する背信行為とは認められない。
(引用終了)
ポーランド、そしてかの国の仮想敵国であるロシア両国は捕虜条約、第1追加議定書に共に批准しています。仮にポーランド領土防衛軍が発足し、対露有事にロシア軍を相手にゲリラ戦を行う状況下に陥っても、ロシア側には条約に満たす条件を満たしていれば彼らを捕虜として適切に扱う義務があります。

私はNATOのポーランド向けTwitterアカウント(@PLinNATO)やポーランド国防省のアカウント(@Poland_MOD)をフォローしていますが、NATOとの共同演習は増えている印象を受けております。それだけ、かの国やNATOが対露脅威に敏感になっているという事なのでしょう。

ポーランド内政や国防政策・戦略にもっと目を向けなければと痛感させられました。

2017年1月29日日曜日

iPhoneからツイートする「きれいなトランプ」、Android使いの「きたないトランプ」の正体とは?

米トランプ大統領は現在、私用のTwitterアカウントと米国大統領としての公的なTwitterアカウント2つを使って情報発信しています。今回は、前者の私用アカウントに焦点を当ててみましょう。

以下、投稿に使用したクライアントを確認できるiOS用Twitterクライアント"The World"を使ってトランプ大統領の私的アカウントを見てみたスクリーンショットです。撮影日、時刻は2017年1月29日21時23分です。

無難なツイートがiPhone用Twitterアプリから確認できる一方、NYタイムズをフェイクニュースと罵る、いかにもトランプ氏らしいツイートがAndroid用Twitterアプリより投稿されているのがわかります。

すなわち、iPhoneからツイートする「きれいなトランプ」と、Androidから罵詈雑言を含めてツイートする「きたないトランプ」が存在するわけです。一体どういうわけでしょうか?

その謎を分析した記事が存在します。以下、朝日新聞デジタル版の記事をご覧ください。

トランプ氏ツイート「二つの顔」 違う端末、本人どっち
http://www.asahi.com/articles/ASK19050CK18UTIL01T.html 
(引用開始)
トランプ氏の英語表現に詳しい愛知淑徳大学のダニー・モルデン教授は「怒りや攻撃的なメッセージはトランプ氏本人がアンドロイド携帯で、前向きな内容や宣伝は陣営関係者らがアイフォーンで投稿している可能性が高い」と解説する。米IT専門家らがこうした分析結果をウェブなどで発表し、昨夏ごろから「二つの人格」疑惑が話題になり始めたそうだ。
(引用終了)
この記事の見方は、彼が大統領に就任した現在のツイートを見るに「当たっている」という印象を受けます。

ところで、トランプ氏は米大統領なのにAndroidスマホを使い続けてセキュリティ上問題ないのでしょうか?オバマ前大統領は、セキュリティに配慮した特別仕様のBlackBerryを使用していましたが…

この疑問に対して、Twitterフォロワーの方よりお答え頂きました。許可を頂いたので転載します。


リプライにて紹介されたこちらの記事
How to Secure a Smartphone for the Tweeter-in-Chief
http://fifthdomain.com/2017/01/25/how-to-secure-a-smartphone-for-the-tweeter-in-chief/ 
を読む限り、機種までは特定できないものの特別仕様のAndroidスマホに切り替えた事がうかがえます。

というわけで、これからも大統領周辺のスタッフがiPhoneから無難なツイートを行い、トランプ氏本人はセキュリティが頑強な特別仕様Androidスマホから、罵詈雑言を含めた「本音」のツイートを行う体制が続くと予想されます。

トランプ氏のツイートをご覧になる際は、是非ともサードパーティのアプリ・クライアントを利用して、iPhoneから投稿されたものか、Androidで投稿されたものか確認してみると面白いですよ。Androidからのものが、おそらく本人です。

2017年1月28日土曜日

フィデル・カストロ弔問の思い出

既に2か月近くの事になりますが、記憶の整理も兼ねてフィデル・カストロ弔問の為、在日キューバ大使館まで足を運んだ事を書き記そうと思います。

フィデル・カストロが死去したのは2016年11月26日の事。
そして、同年11月27日~12月4日の間、9:00~12:00,14:00~18:00の時間帯にて、東京 東麻布の在日キューバ大使館において弔問・記帳の受付がなされていました。

私が大使館に足を運んだのは12月2日の12:10頃のこと。
大使館の建物は、かのキューバ危機の舞台となった国とは思えないほど、小さな佇まいでした。
カストロ死去に伴い、国旗は半旗となって掲げられていました。

既に受付時刻を過ぎてしまい、大使館の門は閉まっていました。私の他にも、遅刻した女性の方がお二人いらっしゃり、門の前で「どうしようか…?」とお話していました。
次の受付開始時刻である14時まで何をして時間を潰そうか…と考えつつ、そのまま大使館の門の前に立っていると、門が開き日本人女性職員の方が、女性二人連れに「せっかく来ていただいたのですから、どうぞ中へ」と話しかけました。すかさず、私も職員の方に「すみませんが、私も入れて頂いてよろしいでしょうか?」とお願いしたところ、ご快諾頂き、大使館内に入る事ができました。

大使館は 1階は受付スペース、2階が弔問の為のスペースとなっていました。

階段で2階へ上がると、そこはまるで葬儀会場のようでした。花が飾られ、フィデル・カストロとゲバラの肖像写真が掲げられ、大使館職員の方々が黒いスーツとネクタイ姿で出迎えてくださいました。

2階の一番奥にあたる部屋が記帳室となっていました。ページをめくると、既に大勢の方々が記帳をしていらっしゃいました。僭越ながら、私も「どうぞ安らかに」の旨の記帳を行いました。

フィデル・カストロには批判的なご意見も多いかと存じますが、それでも私にとり、彼は憧れの存在であり続けています。そして、フィデル自身は「あの世」など信じていなかったであろう事は承知の上で、それでもあの世でゲバラと再会し、共に葉巻を再び楽しんで欲しいと願うばかりです。

フィデルが愛飲していた葉巻「コイーバ」を吸いながら、少々センチメンタルな思いをしつつ書き終えたいと思います。

レーザーガンも運用可能!? MiG-35お披露目

ロシアの新鋭戦闘機、MiG-35がお披露目されました。
露プロパガンダメディアを引用しつつ書いていきます。

まずはスプートニクのこちらの動画から。
高い機動性を見せつけています。
「新たなレーダーとRD33MKエンジンを搭載」「同時に10~30の目標を追尾」といった字幕も。

次にRTの記事を見てみましょう。

Russia presents new MiG-35 fighter jet designed to potentially use laser guns 
https://www.rt.com/news/375349-russia-mig-fighter-jet/ 

いきなり驚きの見出しがきましたね。「レーザーガン」とは一体何を意味するのでしょうか?
 ロシアは「失明をもたらすレーザー兵器に関する議定書」の締約国である(国連軍縮局サイトより確認可能。 http://disarmament.un.org/treaties/s/russianfederation ) である為、少なくともその類の兵器ではないと考えますが…。

レーザーによるターゲティングに関するものなのでしょうか、それとも、敵の電子機器をレーザー兵器で焼き切ってしまうような事を考えているのでしょうか?それこそ、敵人口衛星に高出力レーザーを照射し破壊するような事まで考えている…?いまいちわかりませんね。

スペックは、最高速度時速2700km、上昇限度17500m、戦闘行動半径1000km…といったところのようです。そして、少なくとも170機の導入が見込まれるとか。

基となったMiG-29の運用国が30ヶ国以上に上ることから、輸出にも期待がかかっているようです。
未確認の情報ですが、2020年までにエジプトが導入する予定であるといった話を目にした事もあります。 可能性は低くはないと愚考します。

個人的には、インドが導入するか否か気になる次第です。


2017年1月27日金曜日

マティス国防長官の拷問禁止支持とジュネーブ条約

米トランプ大統領は「水責め」を代表例とするテロリストへの尋問を支持する構えのようですが、米国防省はどうも違うようです。以下、AFPの記事をご覧ください。

マティス米国防長官は拷問禁止を支持、国防総省が発表
(引用開始)
 米国防総省は26日、ジェームズ・マティス(James Mattis)米国防長官の発言として、テロ容疑者などの尋問の際に拷問と見なされる手法を用いることを禁じた法律を支持する姿勢に変わりはないと発表した。
水責めなどの拷問について、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は25日のインタビューで「間違いなく効果がある」と発言した。
 しかし、国防総省のジェフ・デービス(Jeff Davis)報道部長は、マティス国防長官が指名承認の公聴会で、一般的に拷問と見なされる尋問手法を禁止した「米陸軍野戦マニュアル(US Army Field Manual)」を軍や情報機関の尋問における唯一の基準とする方針を支持したとして、「この考えは今も変わっていない」と言明。「武力紛争法であるジュネーブ条約(Geneva Conventions)、国際法、米国内法を順守するとのマティス長官の証言に変わりはない」と述べた。
(引用終了)

国際法上、テロリストがどのように扱われるか?この問題に関する興味深い判例があります。2006年6月29日に合衆国最高裁が判決を下した、ハムダン事件と呼ばれるものです。

イエメン国籍のサリム・アハメド・ハムダンはアルカイダ構成員であり、かのオサマ・ビン・ラディンのボディーガード兼運転手を勤めていた人物です。このような人物に関して、米合衆国最高裁は判決内において、米国とアルカイダとの紛争は「非国際武力紛争」であるとし、ジュネーブ諸条約共通3条の適用を認め、条約内に定められた適切な裁判がなされていないとしました。
ジュネーブ諸条約共通3条の内容は、同志社大新井京先生の「オンライン条約集」より閲覧可能です。( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/gc3.htm )
 (引用開始)

第三条〔国際的性質を有しない紛争〕 締約国の一の領域内に生ずる国際的性質を有しない武力紛争の場合には、各紛争当事者は、少くとも次の規定を適用しなければならない。

 
(1) 敵対行為に直接に参加しない者(武器を放棄した軍隊の構成員及び病気、負傷、抑留その他の事由により戦闘外に置かれた者を含む。)は、すべての場合において、人種、色、宗教若しくは信条、性別、門地若しくは貧富又はその他類似の基準による不利な差別をしないで人道的に待遇しなければならない。
 このため、次の行為は、前記の者については、いかなる場合にも、また、いかなる場所でも禁止する。

 
(a) 生命及び身体に対する暴行、特に、あらゆる種類の殺人、傷害、虐待及び拷問


(b) 人質


(c) 個人の尊厳に対する侵害、特に、侮辱的で体面を汚す待遇


(d) 正規に構成された裁判所で文明国民が不可欠と認めるすべての裁判上の保障を与えるものの裁判によらない判決の言渡及び刑の執行

(2) 傷者及び病者は、収容して看護しなければならない。
 赤十字国際委員会のような公平な人道的機関は、その役務を紛争当事者に提供することができる。
 紛争当事者は、また、特別の協定によって、この条約の他の規定の全部又は一部を実施することに努めなければならない。
 前記の規定の適用は、紛争当事者の法的地位に影響を及ぼすものではない。
(引用終了)
拷問は、共通3条1項(a),(c)に抵触すると考えるのが妥当でしょう。そして、米国もまたジュネーブ条約の締約国です。また、慣習国際法にも抵触すると見るのが妥当でしょう。

マティス長官の姿勢に、胸をなでおろした気分です。

中国 「AWACSキラー」に関する備忘録

現在、我が国を含めた西側諸国の空戦能力は、早期警戒管制機(AWACS,AEW&C)の類に大きく依存している状況にあります。早期警戒管制機の持つ巨大なレーダーによる目標探知・追尾能力、並びにその情報を基にした管制能力が、いわゆる西側諸国の空戦能力の一つの要と言えるでしょう。中国・ロシアにも早期警戒管制機は存在しますが、西側と比較してまだ発展途上の段階にあると愚考します。

そんなAWACSを狙う空対空ミサイルを中国が開発しているとの報がありました。以下、ロイターの記事をご覧ください。

中国、新型の長距離空対空ミサイル開発か
http://jp.reuters.com/article/china-defence-idJPKBN15A0UI 
記事をご覧になればお分かりになるよう、この記事はチャイナ・デイリーを元ネタとしています。
では、元ネタに当たってみましょう。


PLA may have new air-to-air missile
http://www.chinadaily.com.cn/china/2017-01/26/content_28058487.htm 
(引用開始)
An image released online by the Chinese Air Force has led to speculation that the military is testing a beyond-visual-range, air-to-air missile in combat drills.
The photo, recently uploaded to the People's Liberation Army website, shows a J-11B twin-engine fighter jet carrying a large missile - it stretches about one-fourth of the length of the 22-meter-long aircraft - during Red Sword 2016, an aerial warfare exercise over a northwestern desert in November.
(引用終了)
Red Sowrd2016演習時に、AWACSキラーと思しき空対空ミサイルの写真がJ-11Bに搭載されているのが確認されたようですね。
(引用開始)
"The best solution to this problem I can figure out is to send a super-maneuverable fighter jet with very-long-range missiles to destroy those high-value targets, which are 'eyes' of enemy jets," Fu said. "So the successful development of this potential new missile would be a major breakthrough in the Air Force's weapons upgrade."
(引用終了)
と、 Fu Qianshao研究員の言葉にあるよう、'eyes' of enemy jets、すなわちAWACS等がターゲットとなる事がうかがえます。
この種のミサイルはロシアにも存在します。これは、記事内にある通りです。
(引用開始)
Russia also has the R-37 and K-100 air-to-air missiles, which their designers say have operational ranges of up to 400 km.
(引用終了)

ロシアから何らかの技術供与があったのか、それとも中国が独自で開発したのか、気になるところです。

2017年1月26日木曜日

ブラモスもテジャスも来た! インド「共和国記念日」軍事パレード開催

インドのRepublic Day(共和国記念日とでも訳せばいいのでしょうか)に合わせ、軍事パレードを含むパレードが開催されたそうです。

式典全編は、インド情報放送省によるYoutube上での公式配信でご覧になれます。
陸戦兵器が多く出てくるのは36分~50分あたりでしょうか。T-90、ブラモス、アカシュ、BMP-2と盛りだくさんです。
1時間49分頃からは、インドの軍事パレード恒例、バイクのアクロバット走行が見られます。
1時間53分頃から10分程度は航空ショーです。ハインド、C-17、AEW、ミラージュ2000、インド国産戦闘機テジャス、MiG-29、Su-30等々登場します。特に、Su-30の単独アクロバット飛行は圧巻です!

動画をご覧になるのが面倒な方は、インドのTV局NDTVの特集ページをどうぞ。
http://www.ndtv.com/india-news/republic-day-2017-live-parade-on-rajpath-celebrations-across-india-1652838

トランプ シリア「安全地帯設置」発言とトルコ

トランプ大統領の対シリア政策は、就任後一週間が経過しても今なおよくわからない部分がありますが、興味深い発言が出ました。以下、ロイターの記事をご覧ください。

トランプ氏、シリアへの「安全地帯」設置の意向表明
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-syria-safezone-idJPKBN15A0PB 
(引用開始)
 トランプ米大統領は25日、避難民のための「安全地帯をシリアに必ず設置する」意向を示した。米ABCニュースのインタビューで述べた。詳細は明らかにしなかった。
(引用終了)

この「安全地帯」の設置ですが、既に行っている国があります。トルコです。

トルコが「安全地帯」を設置する構想を明らかにしたのは、2015年7月26日の事です。
以下、日経新聞のサイトより共同通信の記事をご覧ください。

 トルコ、シリア北部に「安全地帯」 米も設置合意か
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM26H0Y_W5A720C1FF8000/
(引用開始)
 トルコのチャブシオール外相は26日までに、同国と国境を接するシリア北部に過激派組織「イスラム国」(IS)を排除した「安全地帯」を設置する構想を明らかにした。シリア軍機の飛行も禁止する計画とされ、実現すれば同国の事実上の分割に拍車が掛かりそうだ。
トルコ英字紙ヒュリエト・デーリー・ニューズは、同地帯はシリア北部アレッポ県のマルアからジャラブルスにかけての東西約90キロ、幅40~50キロで、トルコと米国が設置に合意したと報じた。同地域は主にISが支配している。
 チャブシオール氏は25日の記者会見で米国との合意成立は確認しなかったが、「ISとの戦いがうまくいけば同組織を排除した場所が自動的に安全地帯となり、避難民を収容できる」と述べた。
(引用終了)

そして2016年8月24日、トルコはシリア領内に対し地上部隊による侵攻を開始しました。この事は、中東調査会の「中東かわら版」より確認できます。

№86 シリア:トルコ軍の侵攻後の軍事情勢
https://www.meij.or.jp/kawara/2016_086.html 

今思うに、2015~2016年の間に、米国・トルコ間(オバマ政権・エルドアン政権間)で「安全地帯」設置の合意はできていたのでしょうね。

そして、ISISを排除してできた「安全地帯」には、シリア難民が帰還を果たしています。以下、BS1「国際報道2017」(放送当時は国際報道2016でしたが)の特集ページをご覧ください。

2016年11月11日(金) シリア難民帰郷・トルコの思惑は
http://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2016/11/1111.html
記事をご覧になれば、実際に難民が帰還を果たしていること、クルド対策の意味合いも含まれる事、国際社会も黙認している事がお分かりになるかと存じます。

冒頭で述べたように、トランプ政権の対シリア政策は未知数です。ひょっとすると、アサド政権存続容認といった大幅な路線変更を行うのかもしれません。
しかしながら、少なくともシリアの「安全地帯」に関してはオバマ政権の路線を継承する形になるのではないか、との印象を抱いています。



2017年1月25日水曜日

ロシア軍シリア従軍記念章入手

2015年9月にロシアがシリアに軍事介入してから1年半近くが経過しました。その従軍記念章は既に市場に出回っているとの事です。今回、フォロワーの方のご好意で代理購入して頂き、ロシア軍シリア従軍記念章を入手することができました。まずはこの場にて、フォロワーの方にお礼申し上げる次第です。

入手した従軍記念章の写真は以下のようなものです。

表側にはシリアの地図、並びに3機のフランカー系統戦闘機、そして海軍艦船がデザインされています。モチーフとなった海軍艦船は、巡航ミサイル「カリブル」を撃ったカスピ小艦隊のブーヤンM型コルベットでしょうか?

裏面にはロシア国防省の紋章と、ロシア語の文言があしらわれています。知人のロシア語話者に和訳をお願いしたところ、円の内周部には「ロシア国防省」、中央部には「シリア従軍記念章」といった意味の文言が記載されているとの事です。

軍事マニアとして入手できたことは嬉しい一方、私はロシア軍により引き起こされたシリアでの人道危機に思いを馳せさざるを得ないのもまた事実です。

以下のグラフをご覧ください。
こちらはシリア人権ネットワークのツイート( https://twitter.com/snhr/status/815641571949428737 )より引用したものです。

2016年、このNGOが反体制派支配地域内で確認したロシア軍による民間人死者は3967名、各勢力による民間人死者のうち23.45%を占めます。この事を忘れる事は決してできません。

非常にほろ苦い勲章となってしまいました。

オンライン上でのグループ作業を、できる限り効率化したい! その手法とは

オンライン上でのグループ作業、なかなか大変ですよね。
私もGoogleドキュメントを使用し、文書をグループ内でリアルタイムで編集可能にする体制を整えてみたりした経験がありますが、グループメンバーの中にはGoogleドキュメントの扱いに不慣れな方もいらっしゃったりして、あまりうまくいかなかった経験があります。

私が所属していた別のグループでは、 サイボウズLiveを活用してグループ作業を進めた事もあります。先ほど述べたGoogleグループを用いた作業よりかは、効率が上がったかな、という印象ですが、やはり不満点も残ります。

私が失敗を重ねる中、成功を収めているグループも存在します。
首都大学東京の教授を勤めていらっしゃいます、渡邉英徳先生のグループがその一例です。

転載許可を頂きましたので、先生のツイートを以下に掲載します。


 渡邉先生はチャットツール「Slack」を用いて、効率的なグループ作業を実現させていらっしゃるようです。
日本中の大学の多くのゼミで実施されているであろう、学生が教授にその都度メールを送り、 返信を待つ…といった形式を取るよりは、はるかに効率が良いものであろう事は疑いようがないかと思われます。ただ、Slackは国内での知名度は圧倒的に低いのが難点です。

共同作業を行うグループメンバーのITリテラシーが高ければSlack、それほど高いようでなければサイボウズLiveやSkype,Googleグループ等を用いるのが、できる限りグループ作業を効率化する事に繋がるのかな、と愚考します。

多くの方に普及しているチャットツール「LINE」が、こうしたグループ作業に全然向いてないのが残念ですね…。


2017年1月24日火曜日

「上坂すみれ♡をつければかわいかろう」新コーナー「陳宮」 採用記念クビンカ戦車博物館紹介

文化放送では2017年1月21日24:00~放送されました、「上坂すみれ♡をつければかわいかろう」内の新コーナー「陳宮」にて、私がロシアのクビンカ戦車博物館に行った旨のメールが紹介されました。

採用記念に、私が訪れた際に撮影した写真類をこの場にてまとめておきます。写真類は全て、Twitterにて以前アップロードしたもので、未公開のものは無いことは予めご了承頂きたく存じます。

まずは、独ソ戦を再現したリエナクト直後の映像です。自走する軽戦車はT-26のようですね。
時代がズレますが、T-62も自走しています。



リエナクトの写真類です。


T-80Uの内部はこちら。
マウスはこちら。
 劇場版ガルパンでお馴染み、カール自走臼砲です。


雰囲気だけでもお楽しみ頂ければ幸いです。

なお、クビンカ戦車博物館は周囲の軍事関連施設と共に、ロシア人の愛国心を鼓舞する為の施設として展示品の入れ替えが数多くなされているとの事。これからクビンカにいらっしゃる方は、私が見たものとはだいぶ異なる博物館の姿を目にする事になるかと思われます。




英国のSLBM発射試験失敗と隠蔽疑惑

英国は現在、核抑止力を潜水艦発射型弾道ミサイルのみに依存しています。具体的には、4隻のヴァンガード級戦略原子力潜水艦に搭載されたトライデントD5ミサイルによってです。
そのような唯一の核抑止力であるミサイルが発射試験に失敗した事が判明し、信頼性に傷が付く事態となっています。

以下AFP記事に詳細が記述されています。

英政府が核ミサイル試験失敗を隠ぺいか、計画更新の採決直前

まず、発射試験そのものの失敗の有無ですが、CNNの報道によれば、米側も認めているとの事でして、試験が失敗に終わった事は疑いようのないものと思われます。

 US official confirms Trident missile failure

さきのAFPの記事を見てみると、
(引用開始)
テリーザ・メイ(Theresa May)首相は、試験失敗について知っていたかどうか英BBCのインタビューで問われ、明言を避けた。
メイ氏は試験実施時にはまだ首相ではなかったが、7月19日に下院で更新計画が採決にかけられる直前に首相に就任し、老朽化したトライデント搭載潜水艦を新型と交換する必要性を議会で強く主張。計画更新費用として410億ポンド(約5兆8000億円)の予算承認を勝ち取っている。
(引用終了)
との事でして、試験結果の失敗を知っていた上で議会において核抑止力の更新の予算承認を勝ち取ったのであれば「隠蔽」であり問題でしょうし、失敗を知らなかったのであれば今度は首相と軍との連携、あるいは首相交代時の引継ぎがうまくいっていない事を意味し、これまた問題かと愚考します。

孤立主義的な傾向の強いであろうトランプ政権の誕生により、近い未来に英国が独自の核抑止力を手放す事態には至らないかと思われます。しかしながら、Brexitを推進する立場のメイ首相の立場も傷付けかねないこの事態は、とりわけ欧州において大きな影響があるかと思われます。

この問題は露プロパガンダメディア「スプートニク」に話題を提供する事態になっており(私がこの事態を知った契機もスプートニクの記事でした)、この点でも頭が痛いです。

マスコミ:故障した英国の弾道ミサイルが米国の方向に飛んでいった
https://jp.sputniknews.com/incidents/201701223262987/ 

2017年1月21日土曜日

トランプ就任に思う、ロシア政府系メディア「RT」との上手な付き合い方

米国時間2017年1月20日正午、ドナルド・トランプが正式に第45代大統領に就任しました。日本時間では21日午前2時の事でしたが、深夜にも関わらず夜更かしして就任式をご覧になった方も多いでしょう。

ご存知の通り、今回の大統領選挙にはロシアが多様な形で介入を試みました。最も知られているのがサイバー攻撃ですが、プロパガンダ戦という手段でも介入を試みています。そして、米国家情報局長官室公式ウェブサイトにて閲覧可能なこちらの大統領選へのロシアの介入に関する報告書では、ロシア政府系メディアRTに関して多くのページが割かれている他、RTの風刺画すら掲載されています。それだけ、米国内でRTの影響力が大きかったという事でしょう。
https://www.dni.gov/files/documents/ICA_2017_01.pdf

RTはロシア政府系のプロパガンダメディアと定義できます。通常のプロパガンダメディアであれば、プロパガンダ分析に関心のある方以外は見ない方が良いのでしょうが、RTの場合はそうもいかないのが厄介です。RTは、速報が非常に早い等、「使える」メディアでもあるからです。

私はTwitter上で、数多くのメディアをフォローしていますが、例えば「中東のどこそこで爆発が起きた」といったニュースを最初にツイートするのはRTです。 他にも、RTはYoutubeチャンネルを開設しており、そこから数多くの価値ある動画を配信しております。私の場合は、毎年行われるロシアの戦勝記念パレードはRTのYoutubeにおける生中継で見ています。

「使える」プロパガンダメディアであるRTといかにして付き合っていけば良いのか。
ロシア政府系プロパガンダメディアゆえに、ロシア政府の利益になる事を発信し、都合の悪い事は報道しない事を念頭におく事、他のメディアに先駆けて速報を打つ事が多い為、後に続く他メディア報道と比較しファクトチェックを行うことを徹底すべきでしょう。

その上で、「使える」美味しい部分だけかじり取っていくのが、RTとの上手な付き合い方ではないかと愚考します。

2017年1月20日金曜日

オルタナ右翼ミュージックの危険な魅力! -バズフィード「ネオナチが作るオルタナ右翼のテーマ音楽とは」より-

まずはこちらのバズフィードの記事を開いて、紹介されている「C Y B E R N Δ Z I」の「Galactic Lebensraum」(サイト上Youtube埋め込み)と、「Hail Victory」(サイト下バナー)をお聴きになってみてください。

 ネオナチが作るオルタナ右翼のテーマ音楽とは
https://www.buzzfeed.com/bfjapannews/fashwave-jp 

ゲーム音楽を連想させる重厚感のあるサウンド、そしてそこから湧き上がる高揚感、なんと魅力的なことか!
しかしながら、こうした魅力的な音楽が、米国の白人至上主義者であったり、「オルタナ右翼」と呼ばれる人々の間で制作され、共有され楽しまれているという事実は困ったものです。

記事をご覧になればお分かりになるよう、こうした音楽は「ファッショ・ウェイブ(Fashwave)」 と呼ばれているそうです。

こうした音楽(それも魅力的で高揚感溢れるもの)が米国社会の断絶に一役買ってしまっている、という事実は深刻に受け止めねばなりません。何か対抗策はないものでしょうか。

対抗策の1つとして考えられるのが、魅力的で高揚感溢れる音楽であるという点のみを抜き出し、悪ふざけに使ってしまうことです。

前例としては、ニコニコ動画内のMAD動画でよく用いられる北朝鮮音楽「攻撃戦だ」 がこれに該当するかと思います。「攻撃戦だ」は、北朝鮮側の本来の意図を全く無視して、金正恩を風刺するような形で用いられる事が多々あります。ニコニコ動画内の「攻撃戦だ」そのものの動画にも、北朝鮮当局を風刺するような、センス溢れるコメントが多く見られます。

ISISが一方的に国家樹立を宣言して以降は、ISISの曲(ナシード)も同様の形で、MAD動画において悪ふざけに用いられているのを多々見かけます。

リテラシーを持った上で、「ファッショ・ウェイブ」を鑑賞する事が求められると感じます。

(追記) C Y B E R N Δ Z I」はYoutubeチャンネルを持っているのですね。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLWMAwtNGwHOPHt0mARjxug45vNSJ4ksL8 
どれも音楽性そのものは非常に優れていると考える次第です。だからこそ困る、という事は本文で記述した通りです。

そういえば、ゼロ年代、まだYoutubeもニコ動も無かった時代に日本でも右派的な現代音楽をネット上で発信していた「メタル戦士」というハンドルネームの方がいました。今どうしてるんでしょう…??

↓「メタル戦士」の曲の一例
https://www.youtube.com/watch?v=UqSKTbOVi2w 

2017年1月19日木曜日

応援する女性声優さんへの「正しい」感謝の伝え方

ちょっとした騒ぎがありましたので…
いつも私たちに元気を与えてくださる女性声優の皆さん。オタクとしては、常日頃からの感謝の念を伝えたいのは当然の事だと思います。
しかしながら、女性声優の皆さんはある意味「公人」。それ相応の伝え方というのがあるはずです。今まで私がやってきて、(少なくとも失敗ではなかったかな)と思う手法を書いていきます。

・ファンレターを書く
応援している声優さんが所属する事務所の住所へファンレターを送ってみましょう。
私がファンレターを送る際は、宛て名書きは「事務所の住所 事務所名 応援する声優さんの名前」といった感じにしております。送る際のレターセット選びに迷うのも、また楽しみの1つです。便箋に、常日頃からの感謝を書いたらポストへ向かいましょう。
声優さんはファンレターをよく読んでくださるものです。そして、ファンレターの数は、応援する女性声優さんの人気のバロメーターともなり、その観点から応援につながります。

・声優さんのラジオ番組にメールを送る
なにも熟練メール職人に対抗しようとする必要はありません。「普通のお便り」として、応援している声優さんの出演しているアニメの感想を送ってみる、あたりから始めてみましょう。
メールの形式ですが、私の場合は

件名:【○○関連】コーナー名(もしくは普通のお便り)
本文:東京都 RN:ふるくらむ
(以下メール本文)

といった形式を用いています。件名に【】を用いるのは放送作家さんの目に留まりやすいようで、文才の無い私でも多少の採用実績を出しています。

ラジオ番組のリスナーの数を計る際、番組に送られてくるメールの数は大きな参考とされます。リスナーの数を計る「聴取率調査週間」において、各番組がプレゼント等を用意してメールを募るのはその為です。すなわち、メールを送ったその時点で、あなたは応援する声優さんが出演するラジオ番組存続に貢献している、すなわち声優さんの応援につながります。

これは「エジソン」や「こむちゃ」といったワイド番組に、応援している声優さんが出演する場合でも同様です。応援している声優さんの出演回に番組宛へのメールが多ければ、それは声優さんの人気が高いと判断される事でしょう。これも応援につながります。

・お渡し会等「接近戦」に参加する
直接お目にかかって、日頃からの感謝の思いを伝えられる貴重な機会が「接近戦」です。
初めて参加する方は、正直に初めて参加する旨を述べ、「初めてお目にかかります。いつもご活躍拝見してます!」程度で充分かと思います。初めてですと緊張しますしそれだけ言うのが精一杯だと思います。あとは、声優さんの側がお話を膨らませてくださるので、心配しなくて大丈夫です。
ある程度場数を踏めば、緊張がほぐれ会話も弾んでくるようになります。

・イベント、ライブに行く
これが一番の感謝の伝え方だと思います。会場で他のファン、そして応援している声優さんとの一体感を味わう事が感謝を伝えていると言わずになんと言えるでしょうか?周囲の猛者達が若干怖いかもしれませんが、彼らは基本的に、公演中は演者さんの方しか見ていないので問題ありません。

・おわりに
というわけで、「どうせなら応援している声優さんに貢献する形で、日頃の感謝の思いを伝えよう」というのがこの記事の趣旨でした。メールやファンレターを送るのを躊躇している方、イベントに参加しようか迷っている方の背中を少しでも押すことができたなら幸いです。

段位剥奪は可能なのか? 女子部員に体罰を加え重傷を負わせた剣道部顧問 

中学・高校とかけて私は剣道部に入っていました。弱く、試合で負け続きでしたが、剣道部の顧問の先生方、先輩方、同期、後輩と共に武道に取り組めたのは、私にとりかけがえの無い経験です。

そんな私にとり、この報道は看過できないものでした。

剣道部顧問:竹刀で殴り、女子部員入院 千葉県教委が処分
http://mainichi.jp/articles/20170119/k00/00m/040/099000c
(引用開始)
県教委によると、教諭は昨年11月1日朝、素振りをしていた2年の女子生徒に「集中力が欠けている」などと言って正座させ、竹刀で頭を5回以上殴り、のどを突いて脇腹を蹴るなどした。生徒は脳しんとうや首の打撲など4週間のけがをし33日間入院し、現在も通院中。教諭は「かっとしてしまった」と説明したという。
(引用終了)

おぞましい話です。どう考えても剣道の指導の域を逸脱しています。

素振り中に集中力が欠けていると判断したなら、傍に寄り口頭で指導したり、自らの竹刀を生徒が振り下ろすべき場所にかざし、そこに打ち込ませるといった指導法が考えられます。なぜそうした手段を選ばなかったのか。

そして、生徒を正座させた挙句、体罰に至るなど言語同断です。

竹刀は、本来跨ぐことも忌避されるほど丁重に扱われるもの。それを、あろうことか教え子を傷付ける道具として使用するとは剣道人失格以外のなにものでもないでしょう。

剣道をやっていれば喉元に対する突きがどれだけ危険な行為かも理解していたはずです。何の為に、面に「突き垂」が付いていると思っていたのか。ましてや急所の脇腹を蹴るなど…

これほど酷い指導者の話を聞いたのは初めてです。

全日本剣道連盟のウェブサイトで、段位に関する規則を確認したところ、段位の剥奪は可能との事です。
http://www.kendo.or.jp/old/event/judgment/rule1.html#04

重傷を負い、現在も通院されている生徒の方の完治を祈るのが第一。
その上で、顧問には段位の剥奪も視野に入れた、更なる厳重な処分を行うべきと考えます。


県教委によると、教諭は昨年11月1日朝、素振りをしていた2年の女子生徒に「集中力が欠けている」などと言って正座させ、竹刀で頭を5回以上殴り、のどを突いて脇腹を蹴るなどした。生徒は脳しんとうや首の打撲など4週間のけがをし33日間入院し、現在も通院中。教諭は「かっとしてしまった」と説明したという

ニュースサイトで読む: http://mainichi.jp/articles/20170119/k00/00m/040/099000c#csidx3180b4b27493b909e06cc63454a3d22
Copyright 毎日新聞

竹刀で殴り、女子部員入院 千葉県教委が処分

竹刀で殴り、女子部員入院 千葉県教委が処分

竹刀で殴り、女子部員入院 千葉県教委が処分

竹刀で殴り、女子部員入院 千葉県教委が処分

2017年1月18日水曜日

ウクライナの対ロシア国際司法裁判所提訴・仮保全措置要求に関する備忘録

ウクライナがロシアを「テロ行為を支援した」との旨でICJ(国際司法裁判所)に提訴したとの事です。興味深いので、事態を見守るべく備忘録を作成します。

関連する報道はこちら(AFPによるもの)
ウクライナ、「テロ支援」でロシアを国際司法裁判所に提訴

提訴内容は、国際司法裁判所の公式サイト、プレスリリースよりPDFで確認できます。

自国内の反政府勢力を支援する外国を提訴するという構図は、自国内の反政府勢力を支援していた米国をニカラグアがICJに提訴した、「ニカラグア事件」と似ている印象を受けます。

ICJ公式サイトプレスリリースの英文を読むに、ウクライナ側はロシアが、1999年12月9日に国連総会にて採決された「テロリズムに対する資金提供の禁止のための国際条約」(  https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/terroshikin.htm)及び、1965年12月21日に採択された「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」( http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html )に違反しており、ウクライナ・ロシア両国共に条約の加盟国であるとし、提訴したとの旨です。そして、ロシアに対して違反した行為を停止する「仮保全措置」を講じるよう求めています。

国際司法裁判所は、紛争当事国両国の合意無しに裁判には至りませんし、プレスリリースからはこの件が強制的に裁判に持ち込めるロシア側の宣言(選択条項受諾宣言)や、条項(裁判条項)に基づいているとは読めません。つまりは、ロシア側が応じずに無視すれば裁判には至らないと考えられます。

一方、仮保全措置に関しては、現状私の勉強不足でなんとも申し上げられない状況です。仮保全措置要求が通るのか通らないのか…?仮に講じられた場合、ロシア側にとっては大きなダメージとなるかと思います。

おそらくはトランプ大統領就任直前というタイミングで、ウクライナが国際社会へのアピールとして行った提訴・仮保全措置要求なのだと考えます。

(追記)もしこの件で仮保全措置が講ぜられたとしても、ロシア側は無視するものと予想します。ただ、2001年のICJラグラン事件判決において、仮保全措置は法的拘束力があると確認されているとの事ですので、もし仮保全措置をロシアが無視する事態になれば、国際法違反として国際的な非難は免れないものと愚考します。

2017年1月17日火曜日

「公益財団法人」に大出世? APA懸賞論文の今

中国関係でAPAホテルが炎上している最中でありますが、やはりAPAと言えば田母神元航空幕僚長失脚の契機となった「真の近現代史観 懸賞論文コンクール」を忘れるわけにはいきません。

田母神氏失脚の契機となった際の懸賞金は確か300万円であったと記憶しておりますが、昨今はどのようになっているのでしょうか?公式サイトを見てみましょう。

http://ronbun.apa.co.jp/

まず確認できるのは、懸賞金が300万円から500万円にアップしていること。
カイジが背負った借金が当初350万円だった記憶がありますから、カイジはエスポワール号に乗ったり、綱渡りをしたり、帝愛地下帝国のタコ部屋で労働するよりAPA懸賞論文受賞を目指した方が良かったのではないかと思われます。

次に、アパ日本再興財団が公益財団法人に格上げされているのが確認できます。一般財団法人より、各種方面で優遇を受ける模様であります。関連法はこちら( http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO049.html )。

すなわち、物議をかもした田母神氏の論文は「公益」だったのでありましょう。

今回の騒動でAPAホテルの宿泊費が値下がりようでしたら、それもまた一種の「公益」なのかもしれません。

2017年1月16日月曜日

エジプト・サウジアラビア間 海上国境問題に関する備忘録(ティラーン島・サナーフィール島)

エジプトとサウジアラビアの海上国境画定に関して、新たな問題が浮上しています。
かつてエジプト・サウジアラビア双方が領有権を主張し、2016年4月の段階でエジプト政府がサウジアラビアの領有権を認めたティラーン島、サナーフィール島(紅海・ティラーン海峡上に存在する島)に関して、エジプトの最高裁がエジプトの領有権を認める判決を出したとの旨です。

2016年4月のエジプト。サウジアラビア間の交渉は、中東調査会「中東かわら版」内の以下の記事が詳細に解説しています。

№7 サウジアラビア・エジプト:海上国境の画定・二国間を結ぶ橋の建設で合意
https://www.meij.or.jp/kawara/2016_007.html 

エジプト最高裁の判決に関しては、野口雅昭先生のブログ及び、福田安志先生のツイートが参考になるかと存じます。

 紅海の2島帰属問題(野口雅昭先生のブログ「中東の窓」内)
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/5163523.html 

福田安志先生の該当ツイート
https://twitter.com/sadashifukuda/status/820973937873985536

両国が仲裁裁判所を設置して対処したり、国際司法裁判所への提訴が行われる可能性もあると愚考します。

フェイクニュース?観測気球? トランプ・プーチン レイキャビク会談報道の謎

トランプが大統領に就任後、アイスランドの首都レイキャビクでプーチン大統領と会談するとの報道が流れ、米露双方が否定する事態になっています。以下、2017年1月16日付の産経新聞ウェブサイトに掲載された共同通信の記事をご覧ください。

「米露首脳がアイスランドで会談計画」の英紙報道、双方が否定
http://www.sankei.com/world/news/170116/wor1701160004-n1.html
(引用開始)
一方、ロイター通信は、複数のトランプ氏の側近がこの報道を否定したと伝えた。側近の一人は「根拠がない」と述べたという。ロシア通信によると、ペスコフ露大統領報道官も15日、会談について何の交渉も行われていないと述べた。
(引用終了)

米露双方が否定していることがうかがえます。
参考までに、こちらの記事も挙げておきます。

英紙、トランプ・プーチン両氏「会談計画」 否定報道も
http://www.nikkei.com/article/DGXLAS0040005_V10C17A1000000/


レイキャビクにおけるトランプ・プーチン会談に関する報道を流したのは、英紙サンデー・タイムズです。該当紙面は、以下の英スカイニュースのツイートをご覧ください。
https://twitter.com/SkyNews/status/820387619817291777

引用・紹介した記事をご覧になればわかるように、サンデー・タイムズが報じた トランプ・プーチン会談の議題は核兵器削減であるとの旨です。しかし、米露間の関係が著しく悪化している現状を見るに、就任直後に核軍縮の交渉など行うでしょうか?仮に会談を行うにしても、それはウクライナ問題に伴う対露経済制裁がまず議題に上がるのが自然であると愚考します。

バグダディはモスルにいる? カーター国防長官の気になる発言

米軍の支援を受けた、イラク軍・クルド勢力・シーア派民兵による、ISISに占拠されたイラク第2の都市モスル奪還作戦進展は、私の主観では比較的順調といった印象を抱いております。

そんな中、米カーター国防長官の気になる発言がありました。
以下、CNN日本語版2017年1月17日付の記事をご覧ください。

ISIS最高指導者、排除は「間近」 米国防長官が言明
(引用開始)
米国のカーター国防長官は15日までに、過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者の最近の動向に触れ、潜伏場所をしきりに変えているが命運はもはや尽きており、排除は間近との見方を示した。
米の公共放送PBSとの会見で述べた。長官が同容疑者の末路についてこれほど断定的な表現で触れたのは異例。米国はISIS幹部に無人機攻撃などを仕掛け、抹殺を図っている。
(引用終了)

政権交代が間近に迫る中ではありますが、それでも米国防長官がこのように断定的な表現を用いるのは気になるところです。

では、ISISの最高指導者、バグダディはどこにいるのでしょうか?記事内にはこのような文面もあります。
(引用開始)
バグダディ容疑者の潜伏先については、ISISが首都と称するシリア北部ラッカとするのが米政府当局者の間の通説となっていた。ただ、イラクのイスラム教シーア派率いる人民武装軍団(PMU)は11日、イラク北部モスルにいると指摘。同軍団の報道担当者は、バージ、アルカイラワン両町の間に潜んでいるとの情報を入手したと述べた。
(引用終了)
これだけの情報で、バグダディがモスルにいるとは断定できませんが、可能性は排除できないと考えます。また、バグダディの居場所の「本命」であるラッカには、シリア民主軍(SDF)が昨年2016年11月より攻勢をかけている旨です。(参照: http://www.bbc.com/japanese/37893090 )

昨年末は、人道危機と呼んで差し支えない状況におかれていたアレッポの攻防戦に否が応でも目を向けてしまいましたが、今後はモスル・ラッカの戦況も注視すべきでしょう。

2017年1月15日日曜日

「運動そのものが目的となってはいないか?」 センター試験会場近くで行われた反安倍政権デモに関する雑感

今年2017年の大学入試センター試験は1月14,15日の開催です。普段タイムライン上で見かける各大学の先生方の多くも、試験監督に駆り出されている事でしょう。試験監督程度のお仕事であれば、なにも教授や准教授を駆り出す必要はなく、大学の事務員の方でよろしいのでは…?と愚考しますが、そうした声は大学入試センターにはあまり届いていないようですね。

そんな中、昨日1月14日はセンター試験会場となる青山学院大学、國學院大學がある渋谷において「反安倍政権」デモが開催されたとの旨。日本国憲法に保障された言論の自由、集会・結社の自由に鑑みてデモを行う自由は国民にあります。無事(?)実施されているようですから、警察にも認可を得たのでしょう。

しかしながら、デモを行った彼らには、多くの場合受験生は満18歳以上であり、「18歳選挙」解禁によって既に有権者であることを忘れていたのでしょうか。有権者たる受験生の目に、彼らのデモはどう映ったのでしょうか。想像に難くはありません。

今回、渋谷で「反安倍政権」デモを行った彼らは、安倍政権の問題点に関し国民の関心を高め、支持を獲得するというデモ本来の目的を忘れ、デモという運動そのものを自己目的化しまっているのではないか…?と愚考します。

2017年1月13日金曜日

「テロリスト御用達?」メッセンジャーアプリTelegramとは

昨日2017年1月12日に放送されたBS1「国際報道2017」の特集は、インドネシアを舞台にしたISISの新たなテロリスト育成戦術のレポートでした。

従来、ISISは外国人をリクルートし、支配地域まで渡航させ軍事訓練を積ませる手法や、ネット上に流布させたプロパガンダに感化させ、母国でテロ行為を実施させる手法を取ってきました。しかし、ISIS支配地域への渡航規制強化(国連安保理決議2178  http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/is_sc/page23_001173.html 等)、SNS上におけるISISプロパガンダの規制強化(Twitter上でも、数多くのISIS関係者と思しきアカウントが凍結されましたよね)等対策が取られ、ISIS側も新たな手法を模索しているようです。その手法の1つが、「遠隔でテロリストを育成する」事なのだそうです。以下、該当番組のウェブサイトをご覧ください。

2017年1月12日(木)

ジャカルタテロから1年 衝撃 IS“養成マニュアル”
http://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2017/01/0112.html

この特集内で、気になる文面があります。
> こうしたマニュアルや計画に関する情報は、メッセージを自動で消去できる通信アプリを介して、活発にやりとりされているとみられています。

当局による監視を難しくしているこのアプリは、実は誰もが簡単に利用可能なものです。
その名はTelegram.ドイツ・ロシアのメッセンジャーアプリです。
iOS,Android,Windows,Macと様々な媒体から利用できます。
iOS版:https://itunes.apple.com/jp/app/telegram-messenger/
Android版:https://play.google.com/store/apps/details?id=org.telegram.messenger
カタールの衛星テレビ局アルジャジーラ、サウジアラビアの衛星テレビ局アルアラビーヤもTelegramにアカウントを持っているほか、2016年11月3日には中東においてプレゼンス増大著しいロシアの外務省がアカウントを開設しました。それだけ、中東地域に普及しているメッセンジャーアプリということでしょう。私も時折使用しますが、LINEやFacebookメッセンジャーと比較し、シンプルで使いやすいメッセンジャーアプリという印象です。

特集では、
>「アカウントが凍結されても、何度も何度も新しいものを作ればいいのです。
ソーシャルメディアを使えば簡単にやりとりができます。」
とのISIS支持者の言葉が紹介されていますが、Telegramの使用においては携帯電話のSMS(ショートメール)による認証が必要とされます。おそらくは、プリペイドSIM等を活用し、そうした認証をかいくぐっているのではないかと推測します。

Telegramは韓国関連で話題になった事もあります。韓国国内で普及しているメッセンジャーアプリ「カカオトーク」の韓国当局傍受疑惑が浮上し、多くの韓国人がTelegramに「サイバー亡命」を行いました。以下、韓国ハンギョレ新聞2014年10月5日付の記事をご覧ください。

“サイバー亡命”特需でテレグラムが韓国市場に本格参入か
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/18436.html

この「サイバー亡命」のエピソードもまた、Telegramの監視の困難さを象徴するものと思います。

テロリストによるTelegram使用に、国際社会の警戒が高まる事を期待します。

2017年1月12日木曜日

まさか「快楽天」にトランプ風刺漫画が掲載されるとは…

昨日2017年1月11日の私のツイート( https://twitter.com/KimK91fw/status/819188135993044992 )が少々バズっておりますので、こちらにも書いておきます。


このツイートにて紹介した作品は、成人向け漫画雑誌「COMIC快楽天 2017年 02月号」に掲載されております、蜂矢マコト先生作『大統領のインボー』です。 パンチの効いた風刺が非常に面白いので、18歳以上の方は是非ともお買い求めを、そして編集部にハガキを出して蜂矢先生を応援してあげてくださいませ。

当該誌のAmazonリンクを掲載しておきます。アフェリエイトは実施しておりません。


COMIC快楽天 2017年 02月号

ハマス イスラエル兵に対しFB上でハニートラップを実施

シリア・イラクの問題の影に久しいパレスチナ問題ですが、先日の国連安保理決議(イスラエルの入植非難決議)に続いて興味深い報道が入ってきました。以下、AFP通信の記事をご覧ください。

FBの美女、正体はハマス戦闘員…イスラエル兵にハニートラップ
(引用開始)
イスラエル軍当局者が匿名を条件に語ったところによると、ハマスの戦闘員らは偽のプロフィールを基に作成したフェイスブックのアカウントに魅力的な写真を載せ、イスラエル軍の兵士らを長時間の長いチャットに誘い込んだという。
 まんまとだまされたイスラエル兵らはウイスル(筆者注:原文ママ)が仕組まれた偽のアプリをダウンロードし、それによってハマスの戦闘員らにスマートフォンを乗っ取られた。被害者の大部分は階級が低い兵士だという。
(引用終了)

Facebook利用者の方には、面識が無い利用者から友達申請が来るなどした経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。これに引っかかると、場合によってはこうしたサイバー攻撃に引っかかるという事もあるわけですね。

それをイスラーム原理主義勢力と呼称される事の多いハマスが行っていたのは少々意外です。また、イスラエルは第一次中東戦争時、ハニートラップを仕掛けてイギリス軍から戦車を奪ったという逸話を持つ国でもあります。そんなイスラエルが、逆にハニートラップに引っかかるのも皮肉なものですね。

2017年1月11日水曜日

中国海軍空母「遼寧」 台湾海峡航行に関する備忘録

1996年の台湾海峡危機時には、米海軍の空母機動部隊が台湾海峡を航行したことで中国は政治的敗北を喫したとの事ですがそれから20年以上が経過し、今度は中国海軍が空母機動部隊を構築し、台湾海峡を航行する事態に至りました。なんと皮肉な事でしょうか。

空母「遼寧」を中核とする中国海軍空母機動部隊台湾海峡航行に関する、各メディアの報道を列挙します。

まずは朝日新聞の報。
中国空母「遼寧」、台湾海峡を通過 台湾側は警戒
http://www.asahi.com/articles/ASK1C2VX3K1CUHBI00G.html

海外の代表的なメディアもこの件を報じています。

BBCの報。
China aircraft carrier crosses Taiwan Strait amid tension
http://www.bbc.com/news/world-asia-china-38579559 

ニューヨークタイムズの報。
China Sends Aircraft Carrier Into Taiwan Strait

台湾側の対応を見出しに持ってきたメディアもあります。

英タブロイド紙、デイリー・メールの報
Taiwan scrambles fighter jets after China sends its aircraft carrier and escort vessels into Taiwan Strait following anger sparked by Trump phone call 
台湾側はF-16と海軍艦艇を出して対応しているようですね。
 
ロシア政府系プロパガンダメディア RTの報
Taiwan scrambles jets, navy vessels to ‘surveil & control’ passage of Chinese warships 
 
最後に台湾国内の反応に関するもの。
 
台湾国営通信社による「フォーカス台湾」の報。
 中国大陸空母「遼寧」、台湾海峡を航行 国会議員から怒りの声
 
この件は、台湾総統と電話会談を行い、一週間後には大統領に就任するドナルド・トランプの目にはどのように映っているのか気にかかるところです。

2017年1月10日火曜日

中国軍機の対馬近辺・日本海における飛行に対する日韓の反応

2017年1月9日、日本のTwitterを騒がせたのは「各地で空自戦闘機がスクランブル発進を行っている」事でした。「AWACSが発進した」との旨も投稿され、一時はTwitterトレンドに「AWACS」が入る珍しい出来事も発生しましたし、「対馬近辺で何かが起きているのではないか」との憶測も流れていました。一体何が起きていたのでしょうか?

まずは、防衛省・統合幕僚幹部ホームページに掲載された情報を見てみましょう。
 01/09[公表]中国機の東シナ海及び日本海における飛行について
http://www.mod.go.jp/js/Press/press2017/press_pdf/p20170109_01.pdf
この発表によりますと、対馬近辺を飛行し、日本海に飛来したのはY-8早期警戒機×1,Y-9情報収集機×1,H-6爆撃機×6機が飛来したとの旨です。特筆すべきは、H-6爆撃機が6機飛来した事と言えるでしょう。これは、かなり多い飛来数と言ってよいかと考えます。

次に、中国機は韓国に近接する対馬近辺を飛行していたゆえ、韓国空軍もスクランブル発進を実施していると推測しました。この推測は的中していました。以下の韓国聯合ニュースの記事をご覧ください。

中国軍用機約10機 韓国南の防空識別圏内に進入 
(引用開始)
 中国の軍用機約10機が9日午前10時以降、午後3時ごろにかけて韓国南部・済州島の南の岩礁、離於島付近の韓国防空識別圏に入った。これに対し韓国空軍のF15やF16戦闘機約10機が緊急発進(スクランブル)していたことが、韓国政府筋の話で分かった。中国の軍用機のうち8機は大韓海峡(対馬海峡)を通過し、日本の防空識別圏まで飛行した。
(中略)
 中国の軍用機は昨年2月に2機、8月に3機、韓国防空識別圏に進入したが、韓国空軍の戦闘機約10機が緊急発信して対処するのは異例だ。
(引用終了)

では、今回の中国軍機飛行の目的は何だったのでしょうか?先に引用した聯合ニュース記事内には、それを分析する内容も含まれています。
(引用開始)
中国の軍用機が離於島付近の韓国防空識別圏に入り大韓海峡を通過したのは、南シナ海問題などで圧力を強める米国と日本に対する一種の武力誇示と分析される。韓国政府筋は「中国の軍用機の飛行航路からすると、韓国を直接狙ったものとは分析されない」と慎重な反応を示した。 一方、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射で威嚇しようとする北朝鮮に対し、日本が大韓海峡一帯に配備した艦隊の動きを探るものだったとの観測もある。あるいは、韓国と日本を同時にけん制する措置だった可能性もあるとされる。
(引用終了)
日米韓どの国に対するデモンストレーションであったのかは、まだ断定できない状況と言えそうです。
>大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射で威嚇しようとする北朝鮮に対し、日本が大韓海峡一帯に配備した艦隊の動きを探るものだったとの観測もある
との部分より、BMD任務を担う海上自衛隊イージス艦の情報収集も目的の1つであった可能性も考えられるでしょう。

一方、中国側は今回の自国軍機の飛行は定例のものであると表明しています。中国政府系メディア人民日報英語版は、次のようなタイトルの記事を出しています。
Japan panics over routine air training over East China Sea
「日本は東シナ海上空における定例の航空訓練でパニックに陥った」とでも訳しましょうか。

防衛省・統合幕僚幹部ホームページには2017年1月10日付で、日本海の中国海軍艦艇の動向が紹介されています。

 01/10[公表]中国海軍艦艇の動向について
ここに記載された3隻の中国海軍艦艇は、2017年1月5日に津軽海峡より日本海へ航行し、1月10日に対馬海峡を通過したとの旨です。

東シナ海や南シナ海のみならず、日本海における中国軍の動向にも注意を払うべき必要があると考えます。

PS:韓国人のフォロワーの方とやりとりによれば、韓国では今回の中国軍機の飛来より、朴槿恵政権のスキャンダルに関する内政問題がより重きを置いて報道されているとの旨です。

2017年1月9日月曜日

シリア ワディ・バラダにおける反体制派の戦争犯罪(水源破壊)

当記事は、アカウント非公開のフォロワーの方と、有識者の助言を参考にに記述したものです。まずは、この場にて深く御礼申し上げます。

本稿の趣旨は、「シリアにおいて反体制派がダマスカスに至る水源を破壊した事は戦争犯罪に該当するのではないか?」というものです。

2017年1月1日付のBBC日本語版記事を読み、(シリア反体制派が、ワディ・バラダという地域において戦争犯罪を犯しているのではないか?)と疑念を抱いたのが、 この記事を書くに至った契機です。該当部は以下に引用します。
 国連安保理、ロシア・トルコ仲介の停戦を支持
http://www.bbc.com/japanese/38481846
(引用開始)
 停戦合意発効前日の12月29日、国連はワディ・バラダでの戦闘に懸念を表明。ダマスカス周辺住民約400万人に飲料水を供給する水源を、戦闘員たちが意図的に攻撃していると指摘した。
ワディ・バラダは「ジャブハト・ファタハ・アル・シャム」を含む反政府勢力が掌握している。「ジャブハト・ファタハ・アル・シャム」は昨年7月に過激派勢力アルカイダと関係を断つまで、「ヌスラ戦線」と呼ばれていた。
(引用終了)

飲料水供給関連設備の保護を定める条約は存在します。1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(  https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/ap1.htm  )第54条2項、1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/ap2.htm )がそれです。しかしながら、前者は国際的な武力紛争を対象にしている為、後者はシリア政府が締約していない為に、直接適用するのは困難です。
ただし、日本国外務省のウェブサイトから確認できるように( http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/k_jindo/ichiran.html )、前者に171カ国、後者に166カ国と非常に多くの国が加盟していること、国連安保理決議1674「武力紛争と文民に関する決議」を根拠に、慣習法(条文化されていない国際法)違反として追及していく事は可能だと考えます。

次に、反体制派の行為は戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/gc4.htm )3条(ジュネーブ諸条約共通3条)に違反していると考えられます。条文を見てみましょう。
(引用開始)
第三条〔国際的性質を有しない紛争〕 締約国の一の領域内に生ずる国際的性質を有しない武力紛争の場合には、各紛争当事者は、少くとも次の規定を適用しなければならない。

 
(1) 敵対行為に直接に参加しない者(武器を放棄した軍隊の構成員及び病気、負傷、抑留その他の事由により戦闘外に置かれた者を含む。)は、すべての場合において、人種、色、宗教若しくは信条、性別、門地若しくは貧富又はその他類似の基準による不利な差別をしないで人道的に待遇しなければならない。
 このため、次の行為は、前記の者については、いかなる場合にも、また、いかなる場所でも禁止する。

 
(a) 生命及び身体に対する暴行、特に、あらゆる種類の殺人、傷害、虐待及び拷問


(b) 人質


(c) 個人の尊厳に対する侵害、特に、侮辱的で体面を汚す待遇


(d) 正規に構成された裁判所で文明国民が不可欠と認めるすべての裁判上の保障を与えるものの裁判によらない判決の言渡及び刑の執行

(2) 傷者及び病者は、収容して看護しなければならない。
 赤十字国際委員会のような公平な人道的機関は、その役務を紛争当事者に提供することができる。
 紛争当事者は、また、特別の協定によって、この条約の他の規定の全部又は一部を実施することに努めなければならない。
 前記の規定の適用は、紛争当事者の法的地位に影響を及ぼすものではない。
 (引用終了)
国際的な性質を有しない紛争に関する条文ゆえ、今回のケースには適用可能です。そして、水源を破壊しアサド政権側占領地域に住む市民が、飲料水・生活用水を十分に使用できない状況は、この条文に違反している状況と言えると考えられます。

そして2017年1月5日、国連関係者が「戦争犯罪」を警告する事態に至りました。2017年1月6日付AFP通信の記事をご覧ください。

シリア首都、500万人超が水不足 国連関係者「戦争犯罪」を警告
http://www.afpbb.com/articles/-/3113250?pid=18590951
(引用開始)
 国連の支援を受けてシリアの人道状況を調査する組織を率いるヤン・エーゲラン(Jan Egeland)氏は、「戦闘または破壊工作、もしくはこれら両方が原因で」市民550万人への水の供給が阻害されていると指摘。「破壊工作を行って水を入手できなくすることは、当然ながら戦争犯罪だ。水を飲み、水を媒介する病気にかかるのは市民だからだ」と述べた。
 ダマスカスでは飲料水の価格が高騰している。住民の話によると、供給不足の上、わずかに得られる水道水も飲むには適さないため、ボトル入り飲料水を通常の2倍の価格で買わざるを得ないという。  水不足の状況を打開するため、アサド政権側はワディバラダの奪還に乗り出している。
(引用終了)
記事末尾にありますよう、アサド政権側は停戦が発効したにも関わらず、ワディ・バラダへの軍事行動は継続しています。 水源の破壊が、停戦崩壊の引き金になる可能性もありうるでしょう。先に引用したBBCの記事の内容にあるよう、水源の破壊が反体制派によるものだとしたら、国際法、人道の観点から、強く非難されるべきと考えます。反体制派側にとり、国際的な非難を引き起こしかねない水源破壊という行動は、完全な悪手であったと言えます。

非常に重要な問題かと思いますので、Twitterやブログコメントを通じたご指摘、ご意見をお待ちしております。

PS:国連広報センターのサイトでは安保理決議1674の和訳が見当たらず、やむなく創価学会関連のサイトに掲載されていた和訳を参考にしました。( http://www.issue.net/~sun/sc/2006/1674.html ) どうして国連広報センターに和訳が無いんでしょうかね…?

2017年1月8日日曜日

釜山少女像に関する「ウィーン条約」への誤解

在釜山日本総領事館前における新たな慰安婦少女像設置に関連し、にわかに脚光を浴びているのが「ウィーン条約」です。

しかし、「ウィーン条約」と称される条約は複数あります。「外交関係に関するウィーン条約」「領事関係に関連するウィーン条約」「条約に関するウィーン条約」などが挙げられます。

この各種「ウィーン条約」のうち、日本政府が抵触の可能性を懸念しているのは「領事関係に関するウィーン条約」です。これは、2017年1月6日午前の菅官房長官の記者会見より確認できます。首相官邸のサイトより、実際に確認してみましょう。

http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201701/6_a.html
(以下引用)
 領事関係に関するウィーン条約に規定する領事機関の威厳等を侵害するものと考えており、同条規定に照らして、極めて遺憾であります
(引用終了)

Twitter上では、「外交関係に関するウィーン条約」と混同する向きも散見されますが、日本政府が抵触を懸念しそれを表明しているのは「領事関係に関するウィーン条約」の方である事は抑えておくべきであろうと思います。

では、少女像設置が「領事関係に関するウィーン条約」のどの部分に抵触する懸念があるのか検討してみましょう。ここでは、武力紛争法(国際法の一種)研究の第一人者である同志社大新井京教授のウェブサイト( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/ )内のオンライン条約集より、「領事関係に関するウィーン条約」の項目( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/vccr.htm )を参照してみましょう。

(引用開始)
第三一条(領事機関の公館の不可侵)
(中略)
 3接受国は、2の規定に従うことを条件として、領事機関の公館を侵入又は損壊から保護するため及び領事機関の安寧の妨害又は領事機関の威厳の侵害を防止するためすべての適当な措置をとる特別の責務を有する。
(引用終了)

とあります。菅官房長官の会見と照らし合わせるに、日本政府は、具体的には「領事関係に関するウィーン条約」第31条3項に韓国側が抵触していると考えている、と見る事ができます。

ネット上で各種条約を調べる際は、先に言及した同志社大学新井京教授の手によるオンライン条約集( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs.htm ) もしくは東京大学東洋文化研究所の手による『データベース「世界と日本」』(  http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/)を参照、引用するのが信憑性と閲覧のしやすさの観点から得策かと存じます。