2017年1月30日月曜日

オペちゃんに聞く、ポーランド民兵組織復活の兆し? そしてかの国の不安定な政治体制

Twitter上でお馴染み、ワルシャワ在住のポーランド人青年オペちゃん(@OPERATORCHAN)が興味深いツイートをしていました。
許可を頂いたので、まずは転載します。







領土防衛軍なる組織が復活する兆しを見せていること、そして、国防大臣と軍との関係が悪化していること、ポーランド現政権が不安定な状況下にあることがおわかり頂けるかと存じます。

彼とTwitter上にてやり取りしたところ、まず「士官の自首」は「辞任/辞職」の誤記であること、次に領土防衛軍なる組織が本来はポーランド軍の指揮下にある補助戦力として置かれているものの、現実的には有事に正規軍が損耗した際ゲリラ戦を行う民兵組織としての性質が強いこと、更には国防大臣が徴兵制の復活にまで言及していることも判明しました。

私はポーランド内政に関しての知識をそれほど持ち合わせているわけではありませんが、右派政権と称される事の多い現政権(なんと中絶禁止法案まで危うく議会で通りそうになった)はとりわけ彼の住むワルシャワといった都市部ではそれほど支持を受けないと推測されますし、欧州共通の問題として失業率の高さといった経済面の問題が、ポーランド現政権を不安定化させているのだろうと考えます。経済問題と、領土防衛軍参加者に支払われる報酬は無関係ではないのだろうと思います。

そして、領土防衛軍や徴兵制復活といった議論が浮上している事は、NATO正面に位置するかの国の現政権がいかに対露脅威を認識しているか、如実に示しています。対露脅威を特に敏感に認識している国として、電子政府化を行ったエストニア等バルト3国が例として挙げられる事が多いですが、ポーランドもそれに近い対露脅威認識を持っているようです。

ポーランドの政軍関係に関しては、ワルシャワ在住の彼すらよくわかっていない状況で私も正直言ってわかりません。軍の予算や装備調達、部隊の充足率等が問題となっている可能性があると愚考します。

ちなみに、ポーランドが領土防衛軍を復活させ、有事に民兵としてゲリラ戦を行っても国際法上の保護は受けられます。まず、捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(捕虜条約 https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/gc3.htm )第4条2項に民兵に関する規定が存在します。
(引用開始) 

(2) 紛争当事国に属するその他の民兵隊及び義勇隊の構成員(組織的抵抗運動団体の構成員を含む。)で、その領域が占領されているかどうかを問わず、その領域の内外で行動するもの。但し、それらの民兵隊又は義勇隊(組織的抵抗運動団体を含む。)は、次の条件を満たすものでなければならない。


(a) 部下について責任を負う一人の者が指揮していること。


(b) 遠方から認識することができる固着の特殊標章を有すること。


(c) 公然と武器を携行していること。


(d) 戦争の法規及び慣例に従って行動していること。
(引用終了)
更に、1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(第1追加議定書 https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/ap1.htm )43条1項と44条1項、3項に基づきその条件は緩和されます。
(引用開始)
第四十三条 軍隊
1 紛争当事者の軍隊は、部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織され及び武装したすべての兵力、集団及び部隊から成る(当該紛争当事者を代表する政府又は当局が敵対する紛争当事者によって承認されているか否かを問わない。)。このような軍隊は、内部規律に関する制度、特に武力紛争の際に適用される国際法の諸規則を遵守させる内部規律に関する制度に従う。
 第四十四条 戦闘員及び捕虜
1 前条に規定する戦闘員であって敵対する紛争当事者の権力内に陥ったものは、捕虜とする。
3 戦闘員は、文民たる住民を敵対行為の影響から保護することを促進するため、攻撃又は攻撃の準備のための軍事行動を行っている間、自己と文民たる住民とを区別する義務を負う。もっとも、武装した戦闘員は、武力紛争において敵対行為の性質のため自己と文民たる住民とを区別することができない状況があると認められるので、当該状況において次に規定する間武器を公然と携行することを条件として、戦闘員としての地位を保持する。
(a)交戦の間
(b)自己が参加する攻撃に先立つ軍事展開中に敵に目撃されている間
この3に定める条件に合致する行為は、第三十七条1(c)に規定する背信行為とは認められない。
(引用終了)
ポーランド、そしてかの国の仮想敵国であるロシア両国は捕虜条約、第1追加議定書に共に批准しています。仮にポーランド領土防衛軍が発足し、対露有事にロシア軍を相手にゲリラ戦を行う状況下に陥っても、ロシア側には条約に満たす条件を満たしていれば彼らを捕虜として適切に扱う義務があります。

私はNATOのポーランド向けTwitterアカウント(@PLinNATO)やポーランド国防省のアカウント(@Poland_MOD)をフォローしていますが、NATOとの共同演習は増えている印象を受けております。それだけ、かの国やNATOが対露脅威に敏感になっているという事なのでしょう。

ポーランド内政や国防政策・戦略にもっと目を向けなければと痛感させられました。

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