2017年1月18日水曜日

ウクライナの対ロシア国際司法裁判所提訴・仮保全措置要求に関する備忘録

ウクライナがロシアを「テロ行為を支援した」との旨でICJ(国際司法裁判所)に提訴したとの事です。興味深いので、事態を見守るべく備忘録を作成します。

関連する報道はこちら(AFPによるもの)
ウクライナ、「テロ支援」でロシアを国際司法裁判所に提訴

提訴内容は、国際司法裁判所の公式サイト、プレスリリースよりPDFで確認できます。

自国内の反政府勢力を支援する外国を提訴するという構図は、自国内の反政府勢力を支援していた米国をニカラグアがICJに提訴した、「ニカラグア事件」と似ている印象を受けます。

ICJ公式サイトプレスリリースの英文を読むに、ウクライナ側はロシアが、1999年12月9日に国連総会にて採決された「テロリズムに対する資金提供の禁止のための国際条約」(  https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/terroshikin.htm)及び、1965年12月21日に採択された「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」( http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html )に違反しており、ウクライナ・ロシア両国共に条約の加盟国であるとし、提訴したとの旨です。そして、ロシアに対して違反した行為を停止する「仮保全措置」を講じるよう求めています。

国際司法裁判所は、紛争当事国両国の合意無しに裁判には至りませんし、プレスリリースからはこの件が強制的に裁判に持ち込めるロシア側の宣言(選択条項受諾宣言)や、条項(裁判条項)に基づいているとは読めません。つまりは、ロシア側が応じずに無視すれば裁判には至らないと考えられます。

一方、仮保全措置に関しては、現状私の勉強不足でなんとも申し上げられない状況です。仮保全措置要求が通るのか通らないのか…?仮に講じられた場合、ロシア側にとっては大きなダメージとなるかと思います。

おそらくはトランプ大統領就任直前というタイミングで、ウクライナが国際社会へのアピールとして行った提訴・仮保全措置要求なのだと考えます。

(追記)もしこの件で仮保全措置が講ぜられたとしても、ロシア側は無視するものと予想します。ただ、2001年のICJラグラン事件判決において、仮保全措置は法的拘束力があると確認されているとの事ですので、もし仮保全措置をロシアが無視する事態になれば、国際法違反として国際的な非難は免れないものと愚考します。

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