2017年1月31日火曜日

ばいきんまんがジャムおじさんを攻撃しない国際法上の理由とは

どこが出どころかわからないですが、Twitter上でこんなコピペが流行しています。

「ジャムおじさんを攻撃すれば全て終わるのに攻撃しないバイキンマンは、ジュネーブ条約第一追加議定書第54条の「いかなる場合に置いても住民の生存に不可欠なものを供給する施設を攻撃して、その結果住民を飢餓の状態に置くような措置をとってはならない」を遵守している可能性が非常に高い。」

しかし、このコピペには致命的な誤りがあります。というのも、ジュネーブ条約第一追加議定書は「国際的武力紛争」において適用されるものであるからです。ストーリーを考慮するに、アンパンマンとばいきんまんは一つの国家の領域内で争っていると考えられ、ばいきんまんの行為が「国際的武力紛争」に該当するとは考え難いでしょう。

両者は長期間争っているものの、死傷者を出していない点から烈度はかなり低いと考えられ、「非国際的武力紛争」にも該当しないかと考えられます。これは、タジッチ事件中間判決を鑑みれば明らかです。

よって、ばいきんまんが行なっている行為は「内乱」と見るのが妥当であると考えられます。「内乱」に適用されるのは、1949年8月12日のジュネーヴ諸条約共通3条、及び慣習国際法です。

まずは前者を見てみましょう。 ( https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/gc4.htm )
(引用開始)
第三条〔国際的性質を有しない紛争〕 締約国の一の領域内に生ずる国際的性質を有しない武力紛争の場合には、各紛争当事者は、少くとも次の規定を適用しなければならない。

 
(1) 敵対行為に直接に参加しない者(武器を放棄した軍隊の構成員及び病気、負傷、抑留その他の事由により戦闘外に置かれた者を含む。)は、すべての場合において、人種、色、宗教若しくは信条、性別、門地若しくは貧富又はその他類似の基準による不利な差別をしないで人道的に待遇しなければならない。
 このため、次の行為は、前記の者については、いかなる場合にも、また、いかなる場所でも禁止する。

 
(a) 生命及び身体に対する暴行、特に、あらゆる種類の殺人、傷害、虐待及び拷問


(b) 人質


(c) 個人の尊厳に対する侵害、特に、侮辱的で体面を汚す待遇


(d) 正規に構成された裁判所で文明国民が不可欠と認めるすべての裁判上の保障を与えるものの裁判によらない判決の言渡及び刑の執行

(2) 傷者及び病者は、収容して看護しなければならない。
 赤十字国際委員会のような公平な人道的機関は、その役務を紛争当事者に提供することができる。
 紛争当事者は、また、特別の協定によって、この条約の他の規定の全部又は一部を実施することに努めなければならない。
 前記の規定の適用は、紛争当事者の法的地位に影響を及ぼすものではない。

ばいきんまんは、敵対的行為に直接参加しない者として、ジャムおじさんを人道的に待遇し、攻撃していないものと考えられます。

また、パン工場への攻撃を行わないのは、軍事目標主義や文民たる住民の生存に不可欠な物の保護といった慣習国際法を遵守しているものと考えられます。アンパンマンの世界においては、ジャムおじさんのパン工場が確認できる唯一のパン工場であり、この工場が破壊されれば住民が飢餓状態に陥ることは容易に予想できます。

 以上の点より、ばいきんまんがジャムおじさんを攻撃しない理由はジュネーヴ諸条約共通3条、及び慣習国際法を遵守しての事だと考えられます。

しかし、ばいきんまんは時に人質をとったり、 かびるんるんといった生物兵器と思しき兵器を運用したりしています。これは、ジュネーヴ諸条約共通3条違反や、戦闘員と文民を区別する原則に基づき、国際法違反として厳しく追及されるべきではないでしょうか?

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