2017年3月7日火曜日

北・マレーシアが発動した「ペルソナ・ノン・グラータ」とは何か?

金正男暗殺事件に関連し、マレーシア・北朝鮮双方が両国の駐在大使を「ペルソナ・ノン・グラータ」と見なす異常事態となっています。以下、時事通信の記事をご覧ください。

北朝鮮大使が出国=正男氏事件でマレーシアと追放合戦-断交へ発展の可能性も
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017030600669&g=prk
(引用開始)
 6日の朝鮮中央通信によると、北朝鮮外務省はマレーシア政府に対し、駐北朝鮮大使を5日午前10時から48時間以内に国外へ退去させるよう求めた。実際には同大使は既に本国へ召還されているが、「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」と見なしたという。姜氏追放への対抗措置とみられる。
(中略)
さらに今月4日には、マレーシア外務省が求めた同省高官との会談に姜氏は姿を見せなかった。これが決定打となり、マレーシア政府は同日夜、姜氏を「ペルソナ・ノン・グラータ」として追放すると発表。6日午後6時(日本時間同7時)までの国外退去を通告していた。
(引用終了)

ペルソナ・ノン・グラータの制度は、「外交関係に関するウィーン条約」第9条に定められています。同志社大新井京先生の「オンライン条約集」より、この条文を見てみましょう。(https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/diplomat.htm)
第九条 1 接受国は、いつでも、理由を示さないで、派遣国に対し、使節団の長若しくは使節団の外交職員である者がペルソナ・ノン・グラータであること又は使節団のその他の職員である者が受け入れ難い者であることを通告することができる。その通告を受けた場合には、派遣国は、状況に応じ、その者を召還し、又は使節団におけるその者の任務を終了させなければならない。接受国は、いずれかの者がその領域に到着する前においても、その者がペルソナ・ノン・グラータであること又は受け入れ難い者であることを明らかにすることができる。
2 派遣国が1に規定する者に関するその義務を履行することを拒否した場合又は相当な期間内にこれを履行しなかつた場合には、接受国は、その者を使節団の構成員と認めることを拒否することができる。

ペルソナ・ノン・グラータは外交官に対して、「受け入れ難い者」は事務技術職員と役務職員に対して通告されるもので、双方の手続きや効果は同じです。この点において、北朝鮮とマレーシア双方は「外交関係に関するウィーン条約」を遵守しているわけです。

ただ、移動及び居住の自由を定めた自由権規約第12条や在テヘラン米国大使館事件判決で示された外交関係法の「自己完結性」に反する可能性はないのだろうか?と、以下の事案に関して気になっています。今後の検討課題としたいです。

北朝鮮、マレーシア国民の出国一時禁止 正男氏殺害巡り
http://www.asahi.com/articles/ASK37424HK37UHBI01N.html 
(引用開始)
 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏が殺害された事件をめぐり、北朝鮮外務省は7日、北朝鮮に滞在しているマレーシア国民の出国を一時的に許可しないと在北朝鮮マレーシア大使館に通報した。朝鮮中央通信が7日、報じた。
(中略)
一方、マレーシアのザヒド副首相兼内相は7日、地元メディアに対し、同国内の北朝鮮大使館職員の出国を禁じる対抗措置をとったことを明らかにした。
(引用終了)
北朝鮮とマレーシア、相手国民を相互に出国禁止=金正男氏事件で応酬激化、緊迫増す
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017030700815&g=prk
(引用開始)
北朝鮮の金正男氏暗殺事件をめぐり、北朝鮮外務省が7日、北朝鮮に在留するマレーシア国民の出国を認めない措置を講じた。これに対し、マレーシアのナジブ首相は同日、「事実上の人質にしている」と非難し、マレーシアにいる全ての北朝鮮人の出国を禁じる対抗措置を即座に取った。両国の応酬は激化し、緊迫の度がさらに増した。
(引用終了)

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