2017年3月5日日曜日

イラク・モスルにおけるISISの化学兵器使用

西部奪還戦が継続するモスルで化学兵器が使用されたという報告が入っています。どうやらマスタードガスのようです。以下、CNN日本語版の記事をご覧ください。


イラク北部で化学兵器使用か、12人に症状 赤十字
(引用開始)
イラク北部アルビル(CNN) 赤十字国際委員会当局者は4日までに、過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の掃討作戦が続くイラク北部モスルで負傷した住民12人に化学兵器攻撃にさらされたような症状が見つかったと報告した。
同委の中東担当責任者によると、12人は北部アルビル近くの病院で手当てを受けたが、激烈な化学物質に触れたような症状があった。12人は子ども5人、女性3人に男性4人。皮膚のただれ、せき、目の充血、炎症や吐き気などを訴えているという。
CNNの取材に応じたモスル東部の住民2人は、同地区を狙った1日と2日の迫撃砲攻撃で奇妙な化学物質もしくはマスタードガスのような異臭が漂ったと証言。迫撃砲弾はモスル西部からチグリス川を越えて着弾したとしている。
(引用終了)

まずは使用した勢力ですが、イラク政府側の可能性は限りなくゼロに近いと考えられます。イラク政府は2009年に化学兵器禁止条約に加盟を行なっています(http://disarmament.un.org/treaties/s/iraq)。製造方法や保管・運用方法のノウハウはフセイン政権時代と異なり、失われていると考えるのが妥当でしょう。

一方、ISISが使用した可能性は極めて高いと考えられます。
まず、攻略されつつあるモスル西部から何らかの陽動作戦を行いたいという動機が存在すること、そしてISISには既にマスタードガスの使用経験が存在し、運用ノウハウを身につけていると考えられるからです。以下、2016年8月25日付のロイターの記事をご覧ください。

シリア政府軍が化学兵器使用、ISもマスタードガス=国連報告書
http://jp.reuters.com/article/mideast-crisis-syria-chemicalweapons-idJPKCN1100BM 
(引用開始)

国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の合同調査によると、シリア内戦で政府軍が化学兵器の一種である塩素ガスを少なくとも2回使用した。過激派組織「イスラム国」(IS)によるマスタードガス使用も判明したという。ロイターが極秘の調査報告書を入手した。
国連安全保障理事会が昨年、全会一致で設置を決定したこの調査チームは、1年にわたり、シリアの7つの地域で行われた9回の攻撃を軸に調査をしてきた。
(中略)
イスラム国については、15年8月にトルコ国境に近い北部マレアでマスタードガスを使用したことを示す十分な証拠があったという。
(引用終了)

ISISによる今回のマスタードガスと思しき化学兵器の使用は、戦闘に直接しない者への人道的な扱いを定めたジュネーヴ諸条約共通3条、並びに慣習国際法たる軍事目標主義に反する行為と言えるでしょう。

可能ならば、国際刑事裁判所(ICC)での法の裁きが必要であると感じます。


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