2017年4月8日土曜日

「違法だが正当」であったトマホーク59発の悩ましさ

化学兵器使用が招いたトランプ政権による59発のトマホークによるシリア空軍基地攻撃。

これでアサド政権が、再度化学兵器を自国民に対して使用する可能性は低くなったのは間違いないと考えます。その面で、シリアの市民はある種の救いを受けたと感じます。

しかし悩ましさは残ります。59発のトマホークによるシリア空軍基地攻撃は、国連安保理の決議を経ておらず、国際法上違法な武力の行使であったと考えられるからです。

朝日新聞紙面において、日本を代表する国際法学者でいらっしゃる最上敏樹先生の論考が掲載されています。本日は、この論考に深く考えさせられました。

(耕論)米国に正義はあるのか
 ■違法な武力行使、効果も疑問 最上敏樹さん(早稲田大学教授)
 http://www.asahi.com/articles/DA3S12882097.html
大部分は登録しないと読めませんが、このご時世、大手の朝日新聞ですらなかなか経営が厳しい状況ですから、ここは一つ登録して読んであげてください。

無料で読める部分から多少引用します。私個人は、今回の対アサド政権軍事行動が「人道的介入」に該当するとみなせるのではないかと考えたのですが、最上先生はそれに否定的です。
(引用開始)
人道的介入は、2005年の国連総会の特別首脳会議で「保護する責任」という形で理念が認められました。極端な迫害や虐殺が行われているのに、その国が市民を保護する能力を持っていない、あるいは政府自身が迫害を行っている場合に、他の国が武力行使をしてでも、市民を守ることができるという考え方です。武力行使は様々な方策が尽くされた後の最後の手段で、国連安全保障理事会の決議を踏まえるべきだとされています。今回の攻撃は十分な手続きがなされておらず、国際法上、違法な軍事行動といえます。
(引用終了)

全文をお読みになった方はお分かりかと思いますが、最上先生ご自身もまた、国際法の範囲内で現実的に可能な改善案を提示していらっしゃいます。

しかし、この改善案をもってしても、今そこにあるシリア内戦という人道危機に対して、そしてアサド政権に対して充分な措置が取れると思えないと感じたのもまた事実です。

国際法は各種不充分な、限界のあるものだと思います。そして、シリア内戦で数多くの不充分な側面が露呈している、と感じます。


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